フィラリアの感染経路を徹底解説!蚊を媒介した感染の仕組みと予防法
犬を飼うならフィラリア検査・予防は必須!とよくいわれますが、こんな疑問をお持ちの方もいるのでは?
「フィラリアってどうやって感染するの?」
「室内飼いでも本当に感染するの?」
フィラリアは蚊を媒介して感染する寄生虫です。
でも、蚊に刺されたからといってすぐに感染するわけではありません。
実は、フィラリアの感染には複雑なライフサイクルがあります。
この記事では、フィラリアの詳しい感染経路や、感染経路に合わせた効果的な予防方法についてまとめました!
目次
フィラリアの感染経路とは?蚊を媒介した複雑なライフサイクル
フィラリアの感染は、蚊を媒介した複雑なライフサイクルで成り立っています。
「蚊に刺されたらすぐに感染する」と思われがちですが、実際にはもっと複雑なプロセスを経て感染します。
フィラリア感染の5ステップ
フィラリアの感染は、以下の5つのステップで進行します。
ステップ①:感染犬の血液中にミクロフィラリア(幼虫)がいる
すでにフィラリアに感染している犬の血液中には、ミクロフィラリアと呼ばれる幼虫が泳いでいます。
このミクロフィラリアは、成虫のフィラリア(体長:オス15〜18cm、メス25〜30cm)が心臓や肺動脈で産んだ子供です。
1匹のメスが、1日に数千匹のミクロフィラリアを産むといわれています。
体長は約0.3mmと非常に小さく、肉眼では見えません。
ステップ②:蚊が感染犬を吸血してミクロフィラリアを取り込む
蚊が感染犬の血を吸うとき、一緒にミクロフィラリアも吸い込みます。
ステップ③:蚊の体内でミクロフィラリアが成長(約2週間)
蚊の体内に入ったミクロフィラリアは、そのままでは他の犬に感染できません。
蚊の体内で約2週間かけて2回脱皮し、感染幼虫(第3期幼虫)になる必要があります。
ここで重要なのが気温です。
フィラリアの幼虫が蚊の体内で成長するには、一定以上の気温(14℃以上)が必要です。
気温が低いと成長が停止し、感染幼虫になることができません。
つまり、冬の寒い時期に蚊に刺されても、フィラリアに感染するリスクは低いということです。
ステップ④:成長したミクロフィラリアを持つ蚊が別の犬を吸血
感染幼虫を持つ蚊が別の犬を刺すと、蚊の口から感染幼虫が犬の体内に侵入します。
このとき初めて、犬がフィラリアに「感染」したことになります。
ステップ⑤:犬の体内に感染幼虫が侵入→成長→心臓に到達
犬の体内に侵入した感染幼虫は、まず皮膚や筋肉の中で2〜3ヶ月かけて成長します。
この期間に2回脱皮し、第4期幼虫、第5期幼虫へと成長します。
ちなみに、この段階ではまだ血管に侵入していないため、予防薬が効きます。
(月1回の予防薬は、この段階のフィラリアを駆除し、成虫が引き起こすフィラリア症を予防します)
しかしその後、血管に侵入し、血流に乗って心臓や肺動脈に向かう頃には予防薬が効きにくくなります。
だからこそ、月1回の予防薬を欠かさず投与することが重要なのです。
フィラリアを媒介する蚊の種類と活動時期
「フィラリアは蚊が媒介する」といっても、すべての蚊が媒介するわけではありません。
日本では主に3種類の蚊がフィラリアを媒介します。
フィラリアを媒介する主な蚊
日本でフィラリアを媒介する主な蚊は、以下の3種類です。
・ヒトスジシマカ(ヤブ蚊)
黒と白のシマ模様が特徴的な蚊で、公園や庭など屋外でよく見かけます。
動きが素早く、刺されやすい蚊として知られています。
・アカイエカ
室内でよく見かける茶色っぽい蚊です。
夕方から夜間に活動し、人や動物の血を吸います。
重要なのは、アカイエカは成虫で越冬することです。
つまり、冬でも暖かい室内にいれば、アカイエカが活動している可能性があるのです。
・コガタアカイエカ
アカイエカより小型で、主に水田地帯に生息しており、夕方から夜間に活動します。
地域別の蚊の活動時期
日本は南北に長い国なので、地域によって蚊の活動時期が異なります。
【北海道・東北地方】
蚊の活動時期は5月〜10月です。冬は気温が低いため、蚊の活動はほとんどありません。
フィラリア予防は、6月〜11月(蚊が出始めて1ヶ月後から、蚊がいなくなって1ヶ月後まで)が目安です。
【関東〜九州地方】
蚊の活動時期は4月〜11月ですが、温暖化の影響で、最近は3月から蚊が出始めることもあります。
フィラリア予防は、4月〜12月が目安です。
【沖縄地方】
沖縄では、蚊が1年を通じて活動します。
冬でも気温が高く、蚊が年中飛んでいるため、沖縄では通年予防が推奨されます。
感染リスクが高い環境
フィラリアの感染リスクは、住んでいる環境によっても変わります。
特に以下のような環境では、特に感染リスクが高くなります。
温暖で湿度の高い地域では、蚊が活発に活動します。
また、海岸、湖、川、湿地、沼地など、水辺の近くは蚊の発生源になりやすいです。
その他、洪水が多い地域も、蚊が大量に発生しやすい環境です。
都市部でも、ヒートアイランド現象により蚊の活動期間が長くなっています。
ビルや道路からの熱で気温が高く保たれるため、冬でも蚊が活動することがあるのです。
蚊の多い公園や森林も、感染リスクが高い場所です。
ドッグランや散歩でよく訪れる場所が蚊の多い環境なら、特に予防を徹底する必要があります。
予防しないと危険!データが示すフィラリアの本当の感染確率
犬と猫におけるフィラリア感染の確率は、予防措置の有無によって劇的に変化します。
【犬の感染確率】データが示す驚愕の事実
岩手県獣医師会が実施した「北盛岡地区における犬糸状虫感染率の現状」調査の結果がこちらです。
| 予防 | 感染率 |
|---|---|
| 未予防 | 86.2% |
| 不完全予防 | 13.8% |
調査の結果、フィラリア予防をしていない犬の実に86.2%がフィラリアに感染していたという結果が出ています。
また、フィラリア予防をしていても月1の投与を忘れたりした不完全な予防を行った場合の感染率は13.8%となっています。
フィラリアは適切に予防すれば確実に防げるからこそ、愛犬のためにも適切に予防することが肝心です。
こちらの調査では飼育環境別の感染確率も出ています。
調査でフィラリア感染が確認された犬のうち、3.1%が室内飼育の子でした。
このことから、外出をあまりしない室内飼育の犬でもフィラリアに感染するリスクはゼロではないことが伺えます。
また、フィラリア予防をしておらず屋外で飼育されていた犬を対象として、屋外で過ごした夏の回数別のフィラリア寄生率を比較した調査では、1夏を過ごした犬の寄生率は38%、2夏は89%、3夏は92%という結果が出ています。
この結果から、予防をせずに屋外飼育するとほぼ確実にフィラリアに感染することが見てとれます。
また、この調査では感染した犬1頭から最高150匹ものフィラリアが確認されています。
【猫の感染確率】のフィラリア感染:低確率でも致命的なリスク
猫のフィラリア感染確率は犬と比較すると低く、10頭に1頭が感染していたという調査報告があります。
また、猫は犬と比べてフィラリアに感染した場合、危険なことが多いため「感染率が低いから安心」とはいえません。
突然死のリスクも高いため、犬と同様にフィラリア予防の重要性が高いです。
フィラリア予防をしていない時のリスクなどについての詳しい情報はこちら
「室内飼いだから」は危険!見過ごされる感染リスク

うちの子は室内飼いだから大丈夫!
それ、非常に危険な油断です!
データがその危険性を如実に物語っています。
既に紹介した岩手県獣医師会の調査でも、フィラリア感染が確認された犬のうち3.1%が室内飼育の犬でした。
では、なぜ室内飼いの犬や猫がフィラリアに感染してしまうのでしょうか?
その理由は蚊の侵入経路の多様さにあります。
- 玄関や窓の開閉時に侵入する
- 人にくっついて一緒に室内に入る
- 網戸の小さな隙間や破れから侵入する
- 換気扇や通気口から侵入する
- 洗濯物を取り込む際に紛れ込む
- 宅配便の受け取り時に侵入する
- ドアポストの開閉時に侵入する
などなど、蚊が室内に侵入する経路は多岐にわたるので、完全に蚊を遮断することは不可能です。
また、高層マンションの高層階など高い場所に住んでいれば安心と考える方もいますが、エレベーターと共に蚊が上がってくる可能性もあるので、高層階だから侵入されないといったこともありません。
注意していても愛犬や愛猫がフィラリアに感染してしまう可能性があるからこそ「室内飼いだから安全」という考えは避けるべきです。
猫のフィラリア感染経路を解説!犬との違いは?
フィラリア検査や予防といえば犬がフォーカスされがちですが、猫もまたフィラリアに感染します。
基本的な感染経路は犬と同じですが、猫特有の特徴もあります。
猫と犬の感染経路の違い
猫のフィラリア感染経路は、基本的には犬と同じです。
蚊を媒介して感染し、蚊の体内で約2週間、猫の体内で数ヶ月かけて成長します。
しかし、猫は犬と比べてフィラリアに対する抵抗性が強いという特徴があります。
犬の体内では、フィラリアの幼虫がスムーズに成長して多くが成虫になりますが、猫の体内では、フィラリアの幼虫が成長の途中で死んでしまうことが多いのです。
そのため、猫の体内でフィラリアが成虫になる数は、犬と比べて少なくなります。
また、猫の血液中にはミクロフィラリア(幼虫)がほとんど存在しません。
犬の場合、成虫が産んだミクロフィラリアが血液中を循環しますが、猫の場合はミクロフィラリアがほとんど検出されないのです。
これは、猫の免疫システムがミクロフィラリアを攻撃して排除してしまうためと考えられています。
さらに、猫の体内では、フィラリアの成長が犬より遅いという特徴もあります。
犬では6〜7ヶ月で成虫になりますが、猫では8〜9ヶ月かかることもあります。
猫のフィラリア感染が危険な理由
猫は犬よりフィラリアに感染しにくいのですが、いったん感染すると犬より危険な状況になることがあります。
まず、猫のフィラリア感染は確実な検査方法がありません。
犬の場合、ミクロフィラリアの有無を調べる抗原検査で比較的簡単に診断できますが、猫の場合は血液中にミクロフィラリアがほとんど存在しないため、抗原検査が使えないことが多いのです。
陰性と出ても、実は感染しているケースがあります。
次に、猫には確実な成虫駆除の治療法が確立されていません。
犬の場合、メラルソミンという薬で成虫を駆除できますが、この薬は猫には使えません。
そのため、猫がフィラリアに感染してしまった場合、対症療法しかできないのが現実です。
さらに、猫のフィラリア症は突然死のリスクが高いという特徴があります。
猫の心臓は犬より小さいため、たった1〜2匹のフィラリアが寄生しただけでも、心臓や肺の機能に重大な影響を及ぼします。
症状がほとんど出ないまま、ある日突然倒れて死亡するケースも少なくありません。
なお、室内飼いの猫でもフィラリアに感染します。
「うちの猫は完全室内飼いだから大丈夫」と思っていても、窓から入ってくる蚊に刺されて感染することがあるのです。
実際、フィラリアに感染した猫の約30%が室内飼いだったという報告もあります。
人間にもフィラリアは感染する?
犬のフィラリア(犬糸状虫)が人間に感染することは極めて稀です。
日本では年間数例程度しか報告されておらず、ほとんど心配する必要はありません。
なぜなら、人間の体内ではフィラリアの幼虫が成長できないからです。
フィラリアを持つ蚊が人間を刺して幼虫が侵入しても、肺や皮下組織で発育が止まり、やがて死んでしまいます。
死んだ幼虫が「肺腫瘤(はいしゅりゅう)」という塊になることがあり、レントゲン検査で肺がんと間違われるケースもありますが、深刻な症状を引き起こすことはありません。
ただし、犬糸状虫とは別のフィラリアが人間に感染するケースはあります。
主に熱帯・亜熱帯地域(アフリカ、東南アジア、中南米など)に生息するバンクロフト糸状虫が人間に感染して「リンパ系フィラリア症」を引き起こすケースは多く、世界中で1億人以上が感染していると言われています。
日本ではほとんど見られませんが、海外旅行の際は要注意です。
フィラリア感染を防ぐには?
フィラリアは月1回、予防薬を投与することで確実に予防できます。
予防薬は、「虫除け」ではなく「駆虫薬」です。
過去1ヶ月間に体内に侵入したフィラリアの幼虫を駆除することで、成虫になるのを防ぎます。
チュアブル(おやつタイプ)、スポット(滴下タイプ)、注射など種類は豊富です。
なお、予防薬を投与する前に必ずフィラリア検査を受けることが重要です。
すでに感染している犬に予防薬を投与すると、体内のミクロフィラリアが一気に死滅し、血管を詰まらせたり、ショック症状を引き起こしたりする危険があります。
最悪の場合、死に至ることもあるため、予防開始前の検査は絶対に欠かせません。
検査の必要性や、予防薬を使った正しいフィラリア予防の方法などについては、以下の記事でもまとめています。
ぜひあわせてご覧ください!
症状が出たら手遅れ?犬と猫で異なる危険なサイン
フィラリア症の恐ろしさは、症状が現れた時にはすでに重篤な状態になっていることが多い点です。
特に初期段階では症状がほとんどあらわれないため、飼い主が気づくのが遅れがちです。
実際に犬がフィラリアに感染した時に出る症状を進行段階ごとにまとめてみました。
軽度の症状
- 散歩を嫌がる、疲れやすくなる
- 軽い咳が出る
- 食欲が少し落ちる
感染初期の段階ではこうした症状があらわれます。
この段階では症状に気づかないことも多いため、日ごろから愛犬の様子を確認して変化を見逃さないことが重要です。
中度の症状
- 明らかな運動不耐性(すぐに息切れする)
- 慢性的な咳
- 腹部が膨らむ(腹水の貯留)
フィラリアの感染が進行していくと、慢性的な咳や腹部の膨らみなど軽度な症状よりも顕著な変化があらわれます。
これ以上進行してしまうと、命に危険が及ぶ可能性もあるので注意が必要です。
重度の症状
- 呼吸困難
- 失神やふらつき
- 血尿
- 最悪の場合、突然死
フィラリアが進行し続けると、最終的に失神や血尿などの明らかな症状があらわれるようになります。
この状態になってしまうと、突然死のリスクもあるので飼い主はこの状態になる前に愛犬の変化に気付けてあげることが大切です。
猫がフィラリアに感染した時の症状は?・
猫がフィラリアに感染した場合にあらわれる症状はこちら。
- 咳や嘔吐など
- 食欲不振や体重減少
- 急激な呼吸困難
- 突然死
ただし、猫は犬と比べて症状が出ないことが多いうえに、他の病気の症状と区別が難しいことも多いです。
また、猫の飼い主にとって最も重要な事実があります。
それは、犬には有効な成虫駆除の治療法が確立されているのに対し、猫には犬のような確実な成虫駆除治療法が存在しないということ。
つまり、猫がフィラリアに感染してしまった場合、対症療法しかできないのが現実です。
だからこそ、猫におけるフィラリア予防の重要性は犬以上に高いといえます。
さらに詳しいフィラリアの症状やフィラリアの治療方法に関する情報はこちらで解説しています。
まとめ:愛犬・愛猫の命を守るために、今すぐ正しい知識で行動を
この記事では、フィラリアの感染経路について詳しく解説しました。
最後に、重要なポイントをまとめます。
最も大事なのは、正しい知識をもとにフィラリアを予防することです。
愛犬との平和な日々を守るために、ぜひ心がけていきましょう!

