フィラリアの症状とは?初期症状から末期症状まで段階別に解説
「愛犬が最近咳をしている…もしかしてフィラリア?」
「元気がないけど、これってフィラリアの症状?」
そんな不安を抱えている飼い主さんのために、この記事ではフィラリアの症状を段階別に詳しく解説します。
フィラリア症は、蚊を媒介として感染する寄生虫による病気で、放置すれば命に関わります。
しかし、初期段階では目立った症状が現れないため、発見が遅れるケースも多いのです。
というわけで、どのような症状に注意すべきか、いつ動物病院を受診すべきか、しっかり理解しておきましょう!
目次
そもそもフィラリアとは?
フィラリア症は、寄生虫(犬糸状虫)が心臓や肺動脈に寄生することで発症する病気です。
犬糸状虫は成虫になると体長30センチにもなり、白い糸のような形状をしています。
フィラリアは、蚊を媒介して感染します。
その流れは、以下の通りです。
ちなみに、フィラリアは主に犬の病気として知られていますが、猫も感染します。
猫の場合、犬ほど多くの成虫が寄生することは少ないですが、少数の寄生でも重篤な症状を引き起こすことがあるため、要注意です。
また、室内飼いの犬や猫でも油断はできません。
蚊は窓やドアの隙間から侵入してくるため、完全に感染を防ぐことは難しいのです。
そのため、室内飼いであっても予防が必須です!
なお、フィラリアの感染経路について、詳しくは「フィラリアの感染経路を徹底解説!蚊を媒介した感染の仕組みと予防法」で解説しています。
また、猫のフィラリア感染については、「感染してからでは遅い!愛猫のためにできるフィラリアの予防を徹底しましょう!」でもまとめています。
フィラリアの症状はいつから出る?
フィラリアに感染しても、すぐに症状があらわれるわけではありません。
症状が出るまでには、長い時間がかかります。
蚊に刺されてフィラリアの幼虫が体内に入ると、幼虫は皮膚の下や筋肉の中を移動して血管内へ。
感染から約6〜7ヶ月かけて成虫へと成長し、最終的に心臓や肺動脈に到達します。
しかし、成虫が心臓に到達したからといって、すぐに症状が出るわけではありません。
フィラリアの数が少ないうちは、心臓や血管への影響も小さいため、目立った症状は現れないのです。
多くの場合、症状が出るまでには感染から2〜3年かかります。
この間にフィラリアが増殖し、心臓や肺動脈へのダメージが蓄積されていきます。
そして、ダメージが大きくなって初めて、咳や元気の低下といった症状があらわれ始めるのです。
ちなみに、肺動脈に数匹のフィラリアが寄生しているにもかかわらず、無症状のまま過ごすケースもあります。
猫も同様で、約3割は感染していても症状を示さないという報告があります。
このような特徴から、フィラリアは「沈黙の病気」とも呼ばれます。

手遅れになる前に検査と予防が必須ですね!
【犬】フィラリアの症状(段階別)
犬のフィラリア症は、感染の進行度によって症状が変化します。
ここでは、軽症・中等症・重症の3段階に分けて、それぞれの症状を詳しく見ていきましょう。
軽症(初期症状)
フィラリアの感染初期では、はっきりとした症状があらわれないことがほとんどです。
飼い主が気づきにくい、わずかな変化しか見られません。
最も早くあらわれる症状が、軽い咳です。
散歩中や運動後に、時々咳き込むことがあります。
ただし、この段階の咳は軽度で頻度も少ないため、「少し喉がイガイガしているだけ」などと見過ごされがちです。
また、以前より少し元気がなくなったように感じることもあります。
遊びへの反応が鈍くなったり、散歩の時間が短くなったりすることがあるでしょう。
しかし、この変化も非常にゆるやかなため、加齢による変化と間違えられることが多いのです。
食欲にも微妙な変化があらわれます。
食べる量が少し減ったり、食べるスピードが遅くなったりします。
とはいえ、完全に食べなくなるわけではないため、この時点で異常に気づくのは難しいかもしれません。
この段階では、多くの飼い主が「ちょっと疲れているだけ」「最近暑いから」などと軽く考えてしまいます。
しかし、実はこの時期に発見して治療を始めることが、愛犬の命を救う鍵となります。
中等症
フィラリアの寄生数が増え、心臓や肺へのダメージが進行すると、症状がはっきりしてきます。
咳の頻度が増え、運動後だけでなく安静時にも咳をするようになります。
特に、朝起きた時や夜寝る前に咳が出やすくなるのが特徴です。
咳の音も、初期の軽い咳から、より深く苦しそうな咳へと変化します。
運動を嫌がるようになるのも、この時期の典型的な症状です。
このような行動が見られます。
少しの運動でも疲れやすくなり、息が上がるようになります。
その他、体重減少や栄養状態の悪化も目立ち始めます。
食欲は多少あっても、栄養がうまく吸収されず、痩せていきます。
毛並みが悪くなり、毛艶がなくなってくることもあります。
この段階では、多くの飼い主が「何かおかしい」と感じ始めます。
しかし、まだ「そこまで深刻ではない」などと考え、受診を先延ばしにしてしまうケースも少なくありません。
重症(末期症状)
フィラリアの寄生数がさらに増え、心臓や肺の機能が著しく低下すると、命に関わる深刻な症状があらわれます。
激しい咳が続き、呼吸が荒く苦しそうになります。
舌や歯茎が紫色になるチアノーゼという症状が見られることもあります。
これは、体に十分な酸素が届いていない証拠です。
お腹に水が溜まる腹水という症状もあらわれます。
お腹がパンパンに膨らみ、触ると水が入っているような感触があります。
これは、心臓の機能が低下して血液循環が悪くなり、体液が腹腔内に溜まってしまうためです。
さらに進行すると、横になることができず、座ったまま呼吸をする姿勢を取り続けます。
これは、横になると呼吸がさらに苦しくなるためです。
この段階まで来ると、治療は非常に難しくなります。
手術でフィラリアを取り除く方法もありますが、犬の体への負担が大きく、リスクも高くなります。
【猫】フィラリアの症状
猫のフィラリア症には、犬とは異なる特徴があります。
猫の体は犬よりも小さいため、少数のフィラリアでも重篤な症状を引き起こすことがあるのです。
猫がフィラリアに感染した場合、最も多く見られる症状が呼吸困難です。
突然息が苦しくなり、口を開けて呼吸をするようになります。呼吸のたびにヒューヒューと音がすることもあります。
嘔吐も頻繁に見られる症状です。
食事とは関係なく、突然吐くことがあります。
また、食欲不振や体重減少も進行します。
突然死することも……
猫特有の恐ろしい症状が突然死です。
元気だった猫が、何の前触れもなく突然倒れて亡くなってしまうケースがあります。
フィラリアが肺動脈に詰まることで、急激に呼吸機能が低下するためです。
また、猫のフィラリア症には、HARD(Heartworm Associated Respiratory Disease:フィラリア随伴呼吸器疾患)という病態も知られています。
これは、成虫が寄生していなくても、幼虫の段階で肺や気管支に炎症を起こす疾患です。
咳、喘息のような呼吸困難、嘔吐などの症状が現れます。
猫は検査が難しい
猫の場合、検査でフィラリアを確認することが犬よりも難しいという問題もあります。
寄生している成虫の数が少ないため、血液検査で陰性になることが多いのです。
症状から判断して治療を開始せざるを得ないケースもあります。
また、残念ながら、猫のフィラリア症には確立された治療法がありません。
対症療法で症状を和らげることしかできないのが現状です。
猫こそしっかりと予防することが重要といえるでしょう。
フィラリアの合併症
フィラリア症が進行すると、心臓や肺以外の臓器にも影響が及び、さまざまな合併症を引き起こします。
大静脈症候群(急性フィラリア症)
大静脈症候群は、フィラリアの合併症の中で最も危険な状態です。
多数のフィラリアが心臓から大静脈に逆流し、血液の流れを急激に妨げる病態です。
突然、赤茶色の尿(血色素尿)が出るのが特徴的な症状です。
これは、赤血球が大量に破壊されることで起こります。
呼吸困難やショック状態に陥り、治療しなければ数日以内に死亡します。
この状態になった場合、緊急手術でフィラリアを取り除く必要があります。
しかし、手術自体も高リスクで、助かる確率は決して高くありません。
腎障害
フィラリアの寄生により血液循環が悪化すると、腎臓への血流も減少します。
その結果、腎機能が低下し、慢性腎不全を発症することがあります。
腎障害の症状には、水をたくさん飲む多飲、尿の量が増える多尿、食欲不振、嘔吐などがあります。
腎機能は一度低下すると元に戻らないため、早期発見が重要です。
肝障害
心臓の機能低下により、肝臓への血流も滞ります。
肝臓に血液が溜まり、肝腫大や肝機能障害を引き起こします。
その他、黄疸が見られることもあります。
白目や皮膚が黄色くなり、元気がなくなります。
進行すると、腹水が溜まることもあります。
皮膚疾患
フィラリアの幼虫が死滅すると、その破片がアレルギー反応を引き起こすことがあります。
皮膚に炎症が起こり、かゆみや発疹があらわれます。
また、血液循環の悪化により、皮膚の状態も悪くなります。
毛並みが悪化し、脱毛が見られることもあります。
こんな症状が出たらすぐ病院へ!
フィラリアの症状の中には、一刻を争う緊急事態があります。
次のような症状が見られた場合は、すぐに動物病院を受診してください。
赤い尿や赤茶色の尿が出た場合は、大静脈症候群の可能性があります。
数時間から数日で命を落とす危険な状態なので、夜間や休日であっても、緊急で診てもらえる動物病院を探して受診しましょう。
呼吸困難も緊急性の高い症状です。
口を開けて呼吸をしている、呼吸が速くて浅い、舌や歯茎が紫色になっているといった状態は、体に十分な酸素が届いていない証拠であり、一分一秒を争う状況と言えます。
突然倒れて動けなくなった、意識がもうろうとしているといった症状も危険信号です。
ショック状態に陥っている可能性があり、すぐに処置が必要です。
激しい咳が止まらない、お腹が急に膨らんだ、食事や水を一切受け付けないといった症状も、できるだけ早く受診すべきサインです。
動物病院を受診する際は、いつから症状が出たのか、どのような症状なのか、他に気になる変化はないかを獣医師に詳しく伝えましょう。
フィラリア予防をしていたかどうかも重要な情報です。
様子見は禁物です。
「明日になれば治るかも」と考えて受診を遅らせると、取り返しのつかないことになりかねません。
異常を感じたら、すぐに専門家の判断を仰ぎましょう。
フィラリアの検査方法
フィラリアに感染しているかどうかは、動物病院での検査で確認できます。
ここで紹介する複数の検査方法を組み合わせることで、フィラリアの感染の有無や重症度を総合的に判断します。
フィラリア検査の必要性に関する詳しい情報はこちらのページで紹介しています。
参考元:フィラリア予防について
血液検査(抗原検査)
最も一般的な検査方法が、採血による抗原検査です。
この検査では、成虫のメスが産生する抗原を検出します。
少量の血液を採取し、専用のキットを使って検査します。
検査時間は5分程度で、その日のうちに結果がわかります。
ただし、感染初期や感染してから6ヶ月未満の場合、成虫がまだ抗原を産生していないため、陰性と判定されることがあります。
また、フィラリアのオスしか寄生していない場合も陰性になります。
血液検査(ミクロフィラリア検査)
血液中にフィラリアの幼虫(ミクロフィラリア)がいないか、じかに顕微鏡で確認する検査です。
少量の血液を特殊な処理をして、顕微鏡で観察します。
幼虫が見つかれば、確実にフィラリアに感染していると診断できます。
ただし、すべての感染犬で幼虫が血液中に出ているわけではありません。成虫がいても幼虫がいないケースもあるため、この検査だけでは完全に判断できません。
レントゲン検査
胸部のレントゲン写真を撮影することで、心臓の肥大や肺動脈の拡張を確認できます。
フィラリアによる心臓や肺へのダメージの程度を評価するのに役立ちます。
重症度を判断する上で重要な検査ですが、これだけでフィラリアと確定診断することはできません。
超音波検査(エコー検査)
心臓の超音波検査を行うことで、心臓内のフィラリアを直接確認できる場合があります。
心臓の動きや血液の流れも評価でき、重症度の判断に有用です。
ただし、すべてのケースで成虫を確認できるわけではありません。
フィラリアの治療方法
フィラリアに感染していることがわかった場合、それぞれ最適と思われる方法(内科的治療、外科的治療)が行われます。
ここでは、それぞれの治療方法について解説します。
内科的治療
軽症から中等症の場合、薬を使った内科的治療が選択されます。
成虫を駆除する薬を投与して、フィラリアを死滅させます。
ただし、一度に大量のフィラリアを死滅させると、死んだ虫体が血管に詰まって危険なため、段階的にゆっくりと駆除していきます。
治療には数ヶ月から1年以上かかることもあります。
また、心臓や肺の負担を軽減するための薬も併用します。
咳止めや利尿剤、強心剤などを使って、症状を和らげながら治療を進めます。
治療中は、安静が必要です。
運動を制限し、興奮させないようにすることで、心臓への負担を最小限に抑えます。
外科的治療
大静脈症候群のような緊急事態や、内科的治療では対応できない重症例では、手術でフィラリアを取り除くことがあります。
首の静脈からカテーテルを挿入し、心臓や大静脈にいるフィラリアを直接つかんで取り出します。
ただし、この手術は高度な技術が必要で、犬への負担も大きくなります。
また手術後も、残ったフィラリアを駆除するための内科的治療を続ける必要があります。
参考元:犬のフィラリア症(犬糸状虫症)
フィラリアの治療に関する情報は「フィラリアに感染してしまった場合の治療方法には何がある?フィラリア治療を解説」のページでも詳しく解説しています。
猫の治療
猫のフィラリア症には、残念ながら確立された治療法がありません。
犬に使う成虫駆除薬は、猫には使用できないのです。
そのため、対症療法が中心となります。
咳や呼吸困難を和らげる薬、炎症を抑えるステロイドなどを使って、症状をコントロールします。
重症の場合は、酸素吸入や点滴といった集中治療が必要になることもあります。
フィラリアの予防方法
感染が発覚しづらく、ひとたび発症すれば治療が難しい段階に至っていることが多いフィラリア……ですが、フィラリア症は予防できる病気です!
確実に予防することで、愛犬や愛猫をこの恐ろしい病気から守ることができます。
フィラリアの予防には、予防薬を定期的に投与します。
予防薬には、主に飲み薬タイプ、スポットタイプ、注射タイプの3種類があります。
飲み薬タイプは、月に1回投与します。
おやつのように食べられるチュアブルタイプが人気です。
フィラリアだけでなく、ノミ・マダニ・腸内寄生虫もまとめて予防できるオールインワンタイプもあります。
代表的な薬として、ネクスガードスペクトラやカルドメックチュアブルなどが挙げられます。
スポットタイプは、首の後ろに液体を垂らすだけで済むため、錠剤を飲めない犬や猫に適しています。
こちらも月に1回の投与が必要です。
代表的な薬として、レボリューションやセレホールドなどが挙げられます。
注射タイプは、年に1回の接種で12ヶ月間予防できます。
毎月の投与を忘れがちな飼い主さんに向いています。
ただし、注射は犬専用で、猫には使用できません。
なお、予防薬は蚊が活動する期間に合わせて投与します。
一般的には4月から12月までの9ヶ月間投与しますが、温暖化の影響で蚊の活動期間が延びているため、通年投与を推奨する獣医師も増えています。

すでに感染している状態で予防薬を投与すると、重篤な副作用を引き起こす危険がありますよ!
参考元:フィラリア予防について
フィラリアの症状に関するよくある質問
フィラリアの症状について、よくある質問をまとめました。
Q. 症状が出ないこともありますか?
A. はい、あります。
特に感染初期や軽症の場合、目立った症状が現れないことがあります。
犬の場合、肺動脈に少数のフィラリアが寄生していても無症状のケースがあります。
猫も約3割は無症状と言われています。
Q. 1回予防を忘れたら感染しますか?
A. 1回忘れただけで必ず感染するわけではありませんが、その期間に蚊に刺されれば感染のリスクがあります。
予防薬は、体内に侵入したフィラリアの幼虫を駆除するものなので、投与を忘れた期間に感染した幼虫は成長してしまいます。
Q. 咳以外に注意すべき症状はありますか?
A. 元気がない、食欲不振、運動を嫌がる、呼吸が速い、お腹が膨らむ、体重が減る、毛並みが悪くなるといった症状にも注意が必要です。
これらの症状が複数見られる場合は、早めに動物病院を受診しましょう。
Q. 猫のフィラリアは犬より軽いですか?
A. いいえ、むしろ猫の方が深刻な場合があります。
猫は犬よりも体が小さいため、少数のフィラリアでも重篤な症状を引き起こします。
また、治療法が確立されていないため、予防がさらに重要になります。
Q. フィラリアは治りますか?
A. 早期発見できれば治療可能ですが、完治までには時間がかかります。
重症になると治療が難しく、命を落とすこともあります。
治療よりも予防が重要な病気と言えます。
Q. 他の犬にうつりますか?
A. 犬から犬への直接感染はありません。
ただし、感染犬の血を吸った蚊が他の犬を刺せば、間接的に感染が広がります。
まとめ
今回解説してきたフィラリアの症状について、要点をまとめました。
- 初期は無症状で進行し、咳や元気がなくなった頃には深刻化している
- 中等症以上では運動を嫌がり、末期には腹水や呼吸困難で命に関わる
- 猫は少数の寄生でも突然死の恐れがあり、犬以上に予防が不可欠である
- 赤茶色の尿は「大静脈症候群」のサインで、一刻を争う緊急事態となる
フィラリア症は「沈黙の病気」であり、目に見える症状が出たときにはすでにペットの体は限界に近いかもしれません……。
愛犬の健やかな毎日を守れるのは、飼い主さんによる毎年の確実な予防のみ!
飲み薬、スポット、注射といった複数のタイプの中から、やりやすいものを選び、しっかり行いましょう。