犬や猫の関節炎ってどんな病気?治療はできる?
犬や猫は、人間と同じように関節炎になることがあります。
関節炎になってしまうと、痛みで運動不足になったり、元気に走り回る姿が見られなくなったり……犬、猫のQOLを下げることに繋がります。
そんな関節炎は年齢を重ねると発症しやすくなるというイメージを持たれている方も多いと思います。
ですが、実は年齢だけが原因ではありません。
このページでは、関節炎の主な症状や治療方法についてまとめてみました。
関節炎にかかりやすい犬種や猫種についても解説していますので、あわせてご覧ください。
犬や猫の関節炎の原因はなに?
関節炎は、主に下記のような原因で引き起こされます。
- 骨の先端にある関節軟骨がすり減る
- 炎症によって滑液(関節軟骨の周囲にある液)が増えることで関節が腫れる
このような状態になる要因として、さまざまなことが挙げられます。
ここからはそんな関節炎が起こる主な要因について紹介していきます。
加齢による関節への負担
まずは、多くの方がイメージを持っている加齢が原因となっている場合についてお話しします。
人と同じように犬や猫も、関節にある軟骨が年齢を重ねるごとにすり減っていきます。
また、年を重ねるごとに骨はもろくなりますし、筋肉は衰えていってしまいます。
筋力の低下によって体重を支えることが難しくなってくると、骨を支えている関節組織に大きな負担がかかって軟骨の摩耗が加速してしまうことも。
こうしたことが複雑に絡み合うことで関節への負担が大きくなり、最終的に炎症を引き起こすことで関節痛を発症します。
激しい運動による関節への負担
若い犬や猫でも、関節炎を発症することがあります。
加齢によって筋力が衰えて関節の負担が増えて炎症を引き起こすことはありませんが、若さからくる活動量の多さや激しさが関節への負担となってしまうことがあります。
その結果、関節の軟骨などがすり減ってしまい関節炎を発症してしまうという場合があるため、関節炎は年齢を重ねた犬や猫だけが発症するというものではありません。
また、活動的な犬や猫の中でも特に肥満体型だったりすると、標準体型の犬や猫よりも運動による間接への負担が大きくなります。
「肥満体型だから、しっかり運動をさせて痩せさせなくては……!」
と、ダイエットを考えている飼い主さんも多いかと思いますが、このダイエット(激しい運動)がかえって関節に負担をかけ、関節炎を悪化させている場合もあるのです。
疾患による関節への負担
関節炎は以下のような疾患が原因となって生じる場合もあります。
- 膝蓋骨脱臼
- 前十字靭帯断裂
- 股関節形成不全
- 免疫異常
たとえば、前十字靱帯断裂は太ももと脛の骨をつないでいる膝の前十字靱帯と呼ばれる部位が断裂してしまう疾患です。
この前十字靭帯が断裂することによって、膝のクッションが損傷を受けて関節炎につながります。
このようなケースでは、関節炎を治すために原因となっている疾患そのものを治療する必要があります。
疾患によっては治療に時間を要すこともあるため、改善も難しくなってしまう傾向にあります。
参考元:犬の前十字靭帯断裂
細菌感染による関節への負担
加齢による衰えや激しい運動、さらにはさまざまな疾患などが原因として起こる関節炎ですが、それ以外にも怪我・外傷が原因となってあらわれる場合もあります。
具体的には怪我などが原因となって関節部分などに細菌に感染し、細菌が関節やその周辺で炎症を引き起こすというものです。
このような原因で引き起こされる関節炎は、「細菌性関節炎」と呼ばれます。
関節炎になりやすい犬や猫はいる?
すべての犬や猫で関節炎になるリスクがあります。
ですが、遺伝的に関節炎や変形関節炎を生じやすい種類の犬や猫がいます。
下記が、関節炎になりやすいとされる犬や猫の種類になります。
分類 | 猫種・犬種 |
猫 | デボン・レックス
シャム スコティッシュ・フォールド |
小型犬 | チワワ
ポメラニアン |
大型犬 | ゴールデン・レトリバー
ラブラドル・レトリバー ドーベルマン |
小型犬や猫は体重も軽いから関節への負担も少ないだろうから関節炎になりにくそうとイメージする方は少なくありません。
ですが、実際には小型犬や猫でも関節炎になりやすい種類は存在しているため、上記の犬種や猫種の飼い主は特に注意しておく必要があるといえます。
犬や猫の関節炎はどんな症状?
ここでは、犬や猫の関節炎の症状についてまとめています。
また、犬や猫の関節炎は飼い主が痛みに気づきにくいという点に注意すべきなのですが、なぜそのようなことが起こるのかについてもまとめてみました。
主な関節炎の症状
- 歩くときに足を引きずる
- 何度も足を上げる
- 足をかばうような歩き方をする
上記に挙げたような姿が見られる場合、関節炎を引き起こしている可能性があります。
また、特に犬だと大好きなはずの散歩に行きたがらず、連れていこうとすると抵抗する場合は関節炎の可能性があります。
そのほか犬や猫に共通して階段や段差の上り下りをしたがらなくなる点も特徴です。
時期によって軽度~重度と状態はさまざまですが、気温(特に寒さ・冷え)や気圧の変化によって症状が重くなる場合もあります。
関節炎の痛みは分かりにくい
犬や猫は私たちのように言葉を持たないため、私たちに膝が痛いと伝えることはできません。
そのため、足を引きずったり、足を上げる仕草が多くなったりするなどの明確な症状が出る前に関節炎を見抜くのは困難です。
しかも、関節炎が軽度の場合は痛みに慣れてしまって一見すると全く問題が無いように見えてしまうこともあります。
そのため、飼い主が関節炎に気づくのは難しいといわれています。
放置していると関節炎はどんどん悪化してしまうこともあるため、注意が必要です。
犬や猫の関節炎の治療方法
さまざまな原因によってダメージを受けた関節の組織や軟骨は、完全に回復することはありません。
たとえば、すり減った軟骨が再び自然に増えたりすることはありません。
そのため、関節炎を治療するときの基本的な方針は「痛みをやわらげる」「関節炎の進行を遅らせる」といったものになります。
投薬治療
関節痛の痛みをやわらげる対症療法のひとつとして投薬治療があります。
これは痛み止めを投与して関節炎による炎症を抑えたりして痛みをやわらげる治療法になります。
投薬治療に用いられる代表的な薬としては「NSAIDs(非ステロイド系の消炎鎮痛剤)」のほか、サプリメントなどが用いられることもあります。
また、注射の痛み止めを投与して痛みを和らげるといった場合もあります。
この投薬治療は関節炎そのものを治療するわけではなく、あくまでも関節炎の痛みをやわらげる効果しかありません。
そのため、関節痛の原因を根本的に解消するわけではないため、しっかり様子を見てあげることが重要です。
重度の場合は外科的手術
関節炎が軽度の場合は痛み止めやサプリメント、注射を使った対症療法が中心となります。
ですが、重度の関節炎と診断されると関節を固定する手術や人工関節への置換などの大がかりな手術が必要になる場合があります。
こうした手術は犬や猫の体に大きな負担がかかるため、ほかの病気が進行していたり高齢であったりする場合は手術に耐えられないと判断されることもあります。
そのため、関節炎は早期発見や早期治療が必須であり軽症で抑えられるように努めることが重要になります。
参考元:人工股関節全置換術
体重管理
犬・猫の関節炎の原因が肥満体型である場合は、適切な体重管理も必要不可欠です。
具体的には下記の様な対策が有効です。
- 獣医師が指定する療養食を食べさせる
- カロリーコントロールを行う
また、犬や猫の肥満の原因としては、以下のことが考えられます。
- フードやおやつの食べ過ぎ(カロリー過多)
- 飼い主が知らないところでおやつをもらっている
- 運動不足
上記のように日ごろの生活習慣が要因となって肥満になっていることが多いです。
そのため、これらの習慣があるという場合には、まず犬や猫の生活習慣を見直し、飼い主が適切にカロリーコントロールなどを行うようにしましょう。
まとめ
犬や猫の関節炎は加齢や激しい運動、さまざまな疾患や細菌感染などのさまざまなことが原因で起こります。
生きている限り加齢は避けられませんし、治療をするにも限界があるのが実状です。
しかし、早期に治療を行うことで関節炎の痛みを抑えながら、悪化するのを防ぐことができたりします。
関節炎はどんな種類の犬や猫でも起こりえる病気なので仕方がないと諦めるのではなく、愛犬や愛猫が少しでも元気に長く生きられるように飼い主としてできるサポートを続けていきましょう。
また、足を引きずるようになったり散歩に行きたがらくなったりといった異変が見られたら、速やかに動物病院の診断を受けることを心がけましょう。