犬の胃捻転は時間との戦い!発症から6時間以内に知っておきたいこと
「さっきまで元気だったのに、急に苦しみだした!」
犬の胃捻転は、そんな突然の変化から始まることがほとんどです。
胃捻転(正式には胃拡張・胃捻転症候群、GDV)は、発症から数時間で命を落とす可能性がある緊急疾患です。
そして、自然に治ることは絶対にありません。
胃がねじれる(捻転する)病気ですが、一度ねじれた胃が自力で元に戻る可能性はほぼゼロです。
この記事では、そんな恐ろしい胃捻転の詳しい仕組みや症状、なりやすい犬種、予防・治療方法まで、愛犬の命を守るために知っておくべきことをまとめます。
目次
犬の胃捻転(GDV)とは?胃拡張→ねじれるまでの仕組み
胃捻転は、胃が突然ねじれる病気ではありません。
まず胃が異常に膨らむ「胃拡張」が起き、膨らんだ胃がねじれることで「胃捻転」になります。
この2段階の現象を、合わせて「胃拡張・胃捻転症候群(GDV)」と呼びます。
もともとの体質(犬種)や性格、ストレスなどが原因で起こると考えられています。
胃捻転の進行
より詳しく胃捻転の進行メカニズムを解説すると、以下の通りです。
1.胃拡張
食後のガス・発酵・大量の水分摂取などによって胃が急激に拡大します。
風船のように膨らんだ胃は周囲の臓器を圧迫し、この時点でも苦しそうな様子が見られます。
2.胃捻転
膨らんだ胃が重力と体の動きによってねじれ、胃の入り口と出口の両方がふさがります。
同時に脾臓もねじれることが多く、血管がよじれることで血液が全身に回らなくなります。
3.ショック・臓器不全
心臓への血流が途絶え、ショック状態に陥ります。
さらに、以下のような状態に急速に進行します。
「ちょっとお腹が張っている気がする」という段階に気づけるかどうかが、その後を大きく左右します。
胃捻転は「発症から6時間」がリミット!
胃捻転は、発見してからの行動の速さが生死を分けます。
発症から6時間以内に手術を受けられれば、生存率は80〜90%とされています。
しかし12時間が経過すると50%以下に低下し、24時間を超えると10%未満まで落ちると報告されています。
この数字が意味することはひとつ……「様子を見る時間」はないということです。
胃捻転が疑われる症状が出たら、(たとえ深夜・休日であっても)近くの救急動物病院に今すぐ電話して向かってください。
一度ねじれた胃が自力で元の位置に戻ることはほぼなく、自宅でできる応急処置もありません。
「病院に連絡しながら今すぐ向かう」こと自体が唯一の応急処置です。
【胃捻転のサイン】これが出たら今すぐ救急へ!
胃捻転の症状は、初期から非常に危険なサインです。
「少し様子がおかしいかな」という段階でも、以下に当てはまれば迷わず病院へ向かってください。
| 症状 | 緊急度 | 見分け方・補足 |
|---|---|---|
| 空嘔吐 | 最高・緊急 |
胃捻転を示す最も特徴的なサイン。 「えずき続けているのに吐けない」状態。 これが出たら迷わず病院へ! |
| 腹部の膨張 | 最高・緊急 |
叩くとポンポンと空洞音がする。 ただし、肋骨に隠れて外見からはわかりにくい場合も。 |
| 歯茎や舌が白い・青白い | 最高・緊急 |
血液が全身に回っていないサイン。 ショック状態であり、一刻を争う。 |
| ぐったりして立てない | 最高・緊急 |
重症・進行した状態。 発症からすでに時間が経過している可能性が高い。 |
| 呼吸が荒い・速い | 高 |
膨らんだ胃に肺が圧迫されるため。 痛みによる呼吸の乱れも加わる。 |
|
・よだれが多い ・口をくちやくちやする |
高 |
胃の不快感・吐き気のサイン。 空嘔吐と合わせて現れることが多い。 |
|
・元気がない ・じっとしている |
高 |
腹痛で動けない状態。 食後に急に元気がなくなった場合は注意。 |
最も特徴的なサインは「空嘔吐」です。
胃液が出る通常の嘔吐より、何も出ない空嘔吐の方がはるかに危険なサインです。
また、胃捻転が疑われるとき、歯茎の色を確認することで緊急度の目安になります。
ピンク色で湿っていれば正常ですが、白っぽく乾いている場合はショック状態のサインです。
胃捻転になりやすい犬種・リスク要因
実は、胃捻転には「なりやすい犬種」があります。
犬種ごとのリスクレベルを表にまとめると、以下の通りです。
| リスクレベル | 犬種 |
|---|---|
| 特に高い |
・グレートデーン ・セントバーナード ※生涯発症率 21〜24%という報告あり |
| 高い |
・ジャーマンシェパード ・ドーベルマン ・ボクサー ・ゴールデンレトリーバー ・ラブラドール ・ウィペット |
| 注意が必要 |
・ダックスフンド ・バセットハウンド ・パグ (小型犬でも発症例あり) |
特にリスクが高いのはグレートデーンとセントバーナードです。
その他、ジャーマンシェパード・ドーベルマン・ボクサー・ゴールデンレトリーバー・ラブラドールなどの大型犬でも発症が多く報告されています。
ただし小型犬でも発症します。
ダックスフンド・バセットハウンド・パグなどでの発症が知られており、「大型犬じゃないから大丈夫」という油断は禁物です。
犬種以外のリスク要因
加齢もリスク要因のひとつです。
中高齢での発症が多く、6歳以上になると発症件数が増える傾向があります。
また、神経質な性格の犬は、そうでない犬と比べて発症率が約2.5倍という報告があります。
慢性的なストレスがリスクを招くと考えられています。
脾臓の摘出手術を受けた犬も注意が必要です。
脾臓は胃に隣接しているため、摘出後は胃が固定されにくくなり、ねじれるリスクが上がるとされています。
脾臓手術のタイミングで予防的に「胃固定術」を行う場合もあります。
胃捻転の予防方法
根本的な原因が解明されていない以上、100%の予防は難しいですが……。
しかし、以下のポイントを心がければ、リスクを下げることは十分にできます。
| 予防策 | 具体的な方法 |
|---|---|
| 食事を小分けにする(最重要) |
1日1回ではなく 2~3回に分けて与える。 一度の食事量を減らすことで胃の急激な拡張を防ぐ。 |
| 早食いを防ぐ |
早食い防止ボウルを活用する。 食べ物を床に直接置いてゆっくり食べさせる。 |
| 食後1~2時間は運動をさせない |
食後は静かに過ごさせる。 食後すぐの散歩・ボール遊びなどは避ける。 |
| 水の一気飲みを防ぐ |
運動直後の大量飲水は避ける。 水飲みの機会を複数回に分ける |
| ストレスを減らす |
神経質な性格の犬はストレスがリスク要因になる。 落ち着いた環境で食事をさせる。 |
食事の小分けが最も重要な予防策です。
特に大型犬の場合、「食事は1日1回たっぷりあげる」という古い知識を実践している方もいるかもしれませんが、胃捻転のリスクを高めるため、やめましょう。
胃捻転の治療は?「胃固定術」と再発率
胃捻転の治療は、緊急手術が基本です。
まず輸液・昇圧剤でショック状態を安定させながら、血液検査・レントゲン・エコーで状態を確認します。
胃にガスが充満している場合は、口からチューブを挿入するか、腹部に針を刺してガスを抜く処置を行います。
その後、ねじれた胃を正常な位置に戻す整復手術を行い、同時に胃を腹壁に固定する「胃固定術(ガストロペキシー)」を実施します。
壊死した胃壁や脾臓がある場合はその切除も行われます。
胃固定術は、再発防止のための重要な処置です。
実際のところ、胃固定術を行わなかった場合、76%が再発するという報告がある一方、固定術を行うことで再発率は6%まで低下します。
術後は不整脈・DIC・感染症などの合併症が起きないかを数日間モニタリングします。
手術の複雑さによって異なりますが、緊急手術の費用は15〜30万円程度(※)が目安です。
(※動物病院によって異なります)
よくある質問
Q. 胃捻転は自然に治りますか?
A. 自然には治りません。
胃捻転においては「様子を見る」という選択肢はないため、疑わしい症状が出たら今すぐ動物病院に連絡してください。
Q. 自宅でできる応急処置はありますか?
A. 自宅でできることは何もありません。
なるべく興奮させず安静に保ちながら、最寄りの救急動物病院へ向かってください。
Q. 胃捻転の症状は食後何時間後に出ますか?
A. 「何時間後」という明確な目安はありませんが、食事の直後〜数時間以内の発症が一般的です。
「夕食後に急に元気がなくなった」「食べた直後から空嘔吐している」という状況で気づくケースが多くあります。
Q. 小型犬でも胃捻転になりますか?
A. 大型犬より発症率は低いですが、ダックスフンド・バセットハウンド・パグなどでの発症が知られています。
空嘔吐・腹部膨満のサインはすべての犬種で注意が必要です。
Q. 手術後に再発しますか?
A. 胃固定術なしでは76%が再発するとされています。
手術の際に胃固定術も行われることで、再発率は6%まで低下します。
手術を受ける際に胃固定術が含まれているか、担当の獣医師に確認しておくことをおすすめします。
まとめ
今回は犬の胃捻転について、その症状や対処法などをまとめました。
犬の胃捻転(GDV)は発症から数時間で命に関わる緊急疾患
「空嘔吐・腹部膨満・歯茎が白い」←深夜でも今すぐ救急動物病院へ
生存率は12時間で50%以下・24時間で10%未満!時間が命を左右する
大型犬は生涯発症率20%超の報告あり
手術後に「胃固定術」を行わないと76%が再発するため要注意
最も大事なのは、犬の胃捻転は「時間との勝負」ということです。
発症後、6時間以内に処置できるか否かが、犬の生命・健康にかかわります。
食後は症状が見られないかこまめに気を配ってあげましょう!