猫の胃腸炎は予防できる?猫特有の胃腸炎の原因、予防方法とは?
猫はときどき下痢・嘔吐をします。
数時間から長くて1日程度でおさまるものであれば問題はありませんが、2~3日以上続く場合は「胃腸炎」になっている場合があります。
今回は「猫の胃腸炎」をテーマに、急性胃腸炎と慢性胃腸炎の違いや原因について、またそれぞれの予防方法についてまとめてみました。
とくに猫を迎えたばかりの方、猫の下痢にお悩みの方に読んでいただきたい内容となっていますので、ぜひ参考にしてみてください。
猫の胃腸炎の種類と症状
猫の胃腸炎は、「急性胃腸炎」「慢性胃腸炎」の2種類です。
- 急性胃腸炎…病気の経過が短く、症状が数日程度でおさまる
- 慢性胃腸炎…病気の経過が長く、症状が2週間以上続く
あくまでも目安ですが、違いは以上の通りです。
では、それぞれ具体的にはどのような症状が見られるものなのか、次にまとめていきましょう。
急性胃腸炎の症状
急性胃腸炎は、軽症であれば下痢、嘔吐以外はいつも通りであるというパターンが多く、時間の経過とともに回復していきます。
この場合はあまり心配いりません。
ただし、次のような症状がある場合は重症である可能性があります。
- 食欲がない
- 水を飲まない
- ぐったりしている
- 震えている
- 黄色い液(胃液)や血液を吐く
また、猫は体調不良を隠す習性があるため「いつもいる場所にいない」「隠れている」という行動パターンが見られた場合には注意してください。
慢性胃腸炎の症状
慢性胃腸炎の場合、下痢や嘔吐が長期間にわたって続きます。
下痢と嘔吐が慢性的になると、徐々に元気がなくなり、体重が減る、毛並みが悪くなるなどの症状が見られるようになります。
また、慢性胃腸炎のときの便には次のような特徴があります。
- においがきつい
- 軟便、水様便、通常の便を繰り返す
いったん良くなったように見えても、すぐ下痢になる場合は、早い段階で動物病院を受診しましょう。
猫の胃腸炎の治療方法は?
人間と同じように、猫も症状に合わせた治療を行わなければなりません。
ここでは、猫が急性胃腸炎または慢性胃腸炎になった際の治療方法について解説したいと思います。
急性胃腸炎の治療方法
軽度の急性胃腸炎の場合は自然に治ることが多く、治療の必要がないことがほとんどです。
しかし、以下のような場合は注意が必要です。
- 短時間に下痢を何度もしている
- 嘔吐が多い
- 食事が摂れていない
これらの症状があらわれている場合は脱水症状になっている可能性があるため、点滴(皮下点滴)や制吐剤、下痢止めや抗生物質などを用いて治療が行われたりします。
慢性胃腸炎の治療方法
慢性胃腸炎の場合、精密検査(血液検査、検便など)やエコー、レントゲンなどで全身の検査を行って原因を探ります。
これは長引く下痢や嘔吐などが胃腸炎によるものではない場合もあるためです。
検査の結果、慢性胃腸炎による症状だと確定した場合は、下痢や嘔吐による脱水を防ぐための輸液療法や、胃腸を休めるための絶食などを行ったうえで少しずつ消化の良いものを与えるなどして治療を進めていきます。
胃腸炎の原因や状態によって治療法を変える
胃腸炎の症状や猫の状態によって、選ばれる治療法には違いがあります。
たとえば、基本的には嘔吐や下痢などの症状を抑える薬を処方する等の治療法が取られることになりますが、薬を飲むのが難しい場合は別の治療法を行う必要があります。
また原因の違いによって治療法にも違いが出ることがあります。
嘔吐が多く内服薬による治療が難しい場合
嘔吐がひどくて薬を吐き出してしまったり薬を飲ませることが困難と診断されたりした場合は皮下点滴を行います。
状態にもよりますが、数時間~数日入院することもあります。
異物の誤飲が原因になっている場合
若い猫や子猫の場合、おもちゃの紐や腐ったもの、毒性のある花などを食べてしまうことで胃腸炎になってしまうことがあります。
こうした場合には解毒効果のある薬を飲ませるなどの治療法が行われます。
ただし、消化できない異物の場合は内視鏡、開腹手術を行う場合もあります。
毛球症が原因になっている場合
猫には舌で体を舐めて毛づくろいをする習性がありますが、その際に飲み込んだ毛の排出がうまくいかず、体内(胃や腸)で大きな球体になり、胃腸炎の原因になることがあります。
このような場合は、毛玉を吐きやすくする食物繊維入りの毛玉ケア用キャットフードを食べさせる食事療法や、毛玉を溶かす薬を飲ませたりすることで原因を取り除きます。
猫特有の胃腸炎はいくつもあります。愛猫のためにも予防はしっかりと行いましょう!ペットの胃腸の疾患に対する治療薬は通販でも購入することができます!
猫が胃腸炎になってしまう原因はなに?予防方法は?
ここでは猫が胃腸炎になってしまう原因について、またその予防方法について解説します。
ご家庭で実施することで防げる原因もあるので、ぜひこの機会に猫の飼育環境を見直してみてください。
毛球症
胃腸炎は私たち人間も、またペットでいえば犬などもかかることがある病気ですが、毛球症による胃腸炎は猫に特有のものです。
グルーミング(毛づくろい)で体内に入った毛は、通常なら便と一緒に排出されるか、ときどき吐き出すなどして体内から排出されます。
しかし、ときどきそれがうまくいかずに体内に留まって球体になってしまうことがあります。
そうして球体となった毛玉が消化管に詰まってしまうことで、胃腸炎を発症することがあります。
予防方法
普段からこまめにブラッシングを行うことで、グルーミングで体内に入る毛の量を減らせるので毛球症を防ぐことができます。
また毛玉を吐きだしやすくする効果があるキャットフードを食べさせるのも予防方法のひとつです。
なお、グルーミングは猫にとってストレス解消法のひとつでもあるため、やめさせる必要はありません。
しかし、「遊び足りない」などが理由で過剰にグルーミングをしてしまっている場合は「遊びの時間を増やす」というのが根本的な解決法になります。
食事・アレルギー
- 食べてはならない食品(ねぎやにんにく、チョコレート、アボカド、ぶどうなど)を食べた
- 特定のアレルギー食品を食べた
- 新鮮ではない食品を食べた
- 消化しにくいもの(脂肪分が多いものなど)を食べた
上記のような原因でアレルギーを起こし、胃腸炎になる場合があります。
ちなみに、猫が食べてはいけない食品は上記で述べた以外にも多々あります。
たとえばドッグフードもそのひとつです。猫と犬が一緒にいる家庭では、特に注意が必要です。
予防方法
食品アレルギーに関しては、「飼い主さんがしっかり管理を行う」というほか、予防法がありません。
テーブルの上のチョコレートなどのお菓子を置かない、玉ねぎなどの有害食品は冷蔵庫にしまうなどを徹底するようにしましょう。
また、夏場はウェットフードがすぐに傷んでしまうため、これらはすぐに片付けるようにしましょう。
なお、アレルギー対策としてフードを切り替える場合は、少しずつ2週間から1ヶ月ほどの時間をかけて徐々に変えていくようにしましょう。
ストレス
猫は外的要因(ペットホテルに数日預けられた、知らない人がたくさん遊びに来た、など)によるストレスに弱い動物です。
一時的なものであれば、軽度の胃腸炎で済むこともありますが、ストレスを感じる状態が長く続いてしまうことで、慢性胃腸炎になってしまう場合もあります。
予防方法
- 落ち着ける環境を用意する
- なるべく環境を変えないようにする
- おもちゃを使って遊んであげる
このようなことを通じて、ストレスを感じさせないようにすることを意識するのが大切です。
引っ越しや間取りの変更などの場合は、飼い主さんのにおいがついたタオルや猫が気に入っていたおもちゃなどをそばに置いてあげるようにしましょう。
感染症
パルボウイルスや猫コロナウイルスなどのウイルスによる感染症、サルモネラやクロストリジウムなどの細菌、回虫やコクソジウムなどの内部寄生虫に感染することで胃腸炎を発症することもあります。
この場合、「自然に治るのを待つ」というのはご法度です。
とくに、内部寄生虫による胃腸炎の場合、放置することで重篤な病気になったり後遺症が残ったりすることがあり、場合によっては死に至ることもあります。
予防方法
パルボウイルスなどの感染症は、ワクチンを接種することで予防ができます。
猫のライフスタイルに合わせて、3種、5種ワクチンのどちらかを接種するようにしてください。
また、回虫などの寄生虫対策は月に1回程度、予防薬を使用するのがおすすめです。
ちなみに、感染が分かったら早めの対策が必要です。
すぐに動物病院で治療をしてもらいましょう。
異物誤飲
とくに子猫や若い猫の場合、紐などを誤って飲み込んでしまう「誤飲事故」が多く、飲み込んだものが消化管に入り込み、胃腸炎を引き起こすことがあります。
- 腸に到達している
- 消化されないものである
- 排泄されないと診断された
上記の場合は外科手術で取り出す必要があります。
予防方法
「食事・アレルギー」のところでお伝えしたように、異物誤飲についても「飼い主の管理」が最も重要です。
- 紐が付いたものを放置しない
- 紐が付いたおもちゃは避ける
対策を徹底し、猫が誤飲してしまう環境を作り出さないようにしましょう。
まとめ
今回は「猫の胃腸炎」についてまとめてみました。
ポイントは、以下の通りです。
- 猫の胃腸炎は「急性胃腸炎」と「慢性胃腸炎」がある
- 慢性胃腸炎の場合原因特定が重要
- 猫特有の「毛球症」が原因である場合もある
- それぞれの原因にあわせた予防方法を実施することで胃腸炎を防ぐことができる
胃腸炎は、急性であれば数日程度で症状がおさまることが多いですし軽症で済む場合もありますが、慢性の胃腸炎の場合は長い期間、辛い思いをさせてしまうことになります。
猫の胃腸炎の原因はさまざまですが、普段から飼い主が気をつけることで防げることも少なくありません。
愛する猫が辛い思いをしなくて済むように、ぜひ今回の記事で解説した「予防方法」を活かしていただければと思います。