犬猫の歯や口の病気にはなにがある?重大な病気になる前に対策を!

犬猫の歯や口の病気にはなにがある?重大な病気になる前に対策を!人間にもさまざまな口腔病が存在しているように、犬や猫も口腔病にかかることがあります。

愛犬や愛猫の口腔病はきちんと手入れを行うことで発生する可能性を低くすることができますが、それでも100%予防するのは難しく、いつかかってしまうかわからない病気です。
 
放置していると食事を摂るのが難しくなったり、毒素が全身に回ったりして命に関わることもあるため、愛犬や愛猫の口腔病予防はしっかり行う必要があります。

犬や猫がかかる可能性がある口腔病にはどのようなものがあるのか、いくつかご紹介します。

 

犬猫の口や歯の病気にはなにがある?

歯が腫れている犬
愛犬や愛猫の健康管理のためにも必要不可欠といえる口腔病予防。

一言で口腔病といっても、その種類は非常に多く、さまざまなものがあります。

犬や猫がかかる可能性がある口腔病にはどのようなものがあるのか、かかってしまった場合はどういった症状があらわれるのか、簡単にご説明します。

 

口内炎

犬や猫の口腔病で二番目に多いとされている症状です。

一般的には異物を噛むことによる外傷や内臓性(腎不全)、猫エイズや猫白血病ウイルス、糖尿病、副腎皮質機能亢進などの免疫抑制状態を作り出す病気などが原因で引き起こされます。

また、猫の場合、ヘルペスウイルスやカリシウイルスなどによる重症な風邪が原因になることもあります。

 

発症すると、濃くネバネバした唾液や激しい口臭などの症状がみられるようになり、犬の場合は口の周りに触れられるのを嫌がる様子を見せることもあります。

また、痛みから食事や水分補給に影響が出て、食欲不振や発熱、体重減少などに繋がる場合もあるため、注意が必要です。

放置していると口内炎による痛みから摂食困難に陥り、脱水や衰弱、場合によっては死亡するおそれもあります。

 

歯周病(歯肉炎歯周炎)

3歳以上の犬や猫の約8割が罹患しているといわれており、初期段階では歯肉炎、進行すると歯周炎と呼ばれるようになります。

口腔内に存在する細菌が原因で、歯に付着した歯垢が石灰化して歯石になり、歯石と歯肉の間である歯肉溝や歯根まで細菌が侵入増殖することによって引き起こされます。

 

発症すると、歯垢や歯石の付着から始まり、細菌が出す毒素によって歯肉が激しい炎症を起こします。

口臭の悪化やよだれの増加、歯肉の腫れや赤み、出血、歯の動揺や脱落などの症状がみられるようになり、悪化すると目の下や頬の腫れ、顎の骨折などの症状に繋がります。

適切な治療をせずに放置してしまうと、歯根部が化膿して頬部が破れてしまったり、細菌が血管内に侵入して全身に悪影響を与え、肝臓等の臓器にも影響したりすることがあります。

 

唾液腺嚢胞

耳下腺、下顎腺、舌下腺、頬骨腺の唾液腺や唾液管が損傷を受けた結果、皮下組織に唾液が漏れて溜まってしまう症状です。

猫よりも犬でみられることが多く、犬では舌下腺と下顎腺での発生が多いとされています。

感染症や口腔内の炎症、外傷、唾石という結石が導管の中で閉塞することが原因として挙げられますが、はっきりとした原因がわからない場合もあります。

 

発症すると嚢胞ができた部位に唾液が溜まり、顎の周りや舌、咽頭部に大きな腫れが生じます。

痛みを伴わないことが多いですが、口腔内にできた場合は摂食障害や嚥下障害、咽頭部にできた場合は呼吸困難を起こす場合もあります。

放置しているとどんどん大きくなって治りも悪くなってしまうため、早めの治療が推奨されています。

 

欠歯埋没歯

永久歯が本来の数より少ないものを欠歯、外から見えなくても歯肉や顎骨内に歯が埋まっていて生えていない状態のものを埋没歯といいます。

欠歯はそのほとんどが遺伝性のものと考えられていますが、歯胚に感染が起こることが原因になる場合もあります。

また、埋没歯は歯が萌出するためのスペースが足りない、歯の成長する方向に問題があるなどの原因で本来生えてくるはずの永久歯が生えず、埋まってしまったままになることによって引き起こされます。

 

欠歯であるか埋没歯であるかは、歯科用レントゲンを撮って判断します。

埋没歯の場合、その歯を包むように含歯性嚢胞が形成され、周囲の歯を圧迫したり、周りの歯根や顎の骨を溶かしてしまったりするおそれがあります。

放置していると隣の歯の歯根を圧迫し、歯が抜けたり動揺してしまったりして、様々な問題に繋がってしまいます。

 

根尖膿瘍

歯石が重度に付着し、歯周病を発症している場合によくみられる症状で、特に中高齢の犬や猫で多くみられます。

根尖部に膿が溜まることによって引き起こされる病気で、もっとも多い原因は歯周病の悪化です。

また、歯が折れて歯髄が露出し、歯髄の細菌感染が根尖部に広がることが引き金になることもあります。

病変が歯根部にあるため、症状が進行しないと気づきにくい厄介な病気でもあります。

 

初期のうちは、痛みから硬いものを食べたがらなくなる、片側の顎ばかりで噛む、食べにくそうにするなどの症状がみられます。

進行してくると頬、特に目の下が腫れ、腫瘍部分の頬の皮膚が破れて血や膿が出ます。

さらに炎症が進行した場合、歯の周囲の組織が溶けて顎骨の骨折が起こりやすくなり、これは特に小型犬の顎骨で多くみられます。

 

悪性黒色腫(メラノーマ)

メラニン色素産生細胞由来の悪性腫瘍で、犬で多く発生し、その他の動物種ではあまり多くみられません。

メラニンを作る細胞であるメラノサイトが癌化することによって発生し、発症する原因ははっきりわかっていません。

口腔内にできるものは悪性度が高く、リンパ節や肺などの臓器によく転移するため、注意が必要です。

 

発症すると黒いしこりができ、徐々に大きくなっていきます。

口腔内にできた場合は食欲の低下、口臭やよだれの増加などの症状がみられ、腫瘍の周辺では大きい傷ができたり出血がみられたりします。

進行が早い腫瘍のため、発生が明らかになった時点で、すでにリンパ節や肺に転移している可能性もあります。

無治療のまま放置すると、治療した場合と比べてペットの生存期間が短くなるリスクがあり、早期発見と早期治療が重要になります。

 

扁平上皮癌

特に高齢化した犬や猫で多くみられ、皮膚や口腔内に発生します。

多くは歯肉に発生し、転移はあまり早くありませんが、舌の根本と扁桃に発生したものは高い転移率がみられるので注意が必要です。

はっきりとした原因は明らかになっていませんが、色素の薄い皮膚によくみられることや日光にさらされる時間が長いと発症しやすいといわれています。

 

発症すると、ただれや潰瘍がみられ、ときには出血も起こります。

病変部は赤く円状に硬くなったり、カリフラワー状に増殖したりする場合もあり、外傷に間違われやすい腫瘍でもあります。

粘膜にできる扁平上皮癌は増殖が速く、リンパ節への転移が起こりやすい傾向があり、注意が必要です。

腫瘍が大きくなりすぎると飲水や食事をするのが難しくなる、もしくはできなくなってしまうため、放置せず適切な治療を行うのが重要です。

 

カリシウイルス性口内炎

猫カリシウイルスに感染することによって引き起こされる猫特有の症状です。

どの猫種や年齢の猫でも発生しますが、体の抵抗力が低い猫で発症しやすいため、愛猫の抵抗力が落ちている場合は特に注意が必要です。

 

発症すると元気消失や発熱、くしゃみなどの呼吸器症状にくわえて、舌や口腔内の粘膜に水疱や潰瘍ができ、痛みによって食欲が低下したりよだれが出たり、舌炎がみられたりします。

放置していると肺まで増殖が進み、肺炎へ進行したり、関節の滑膜で増殖を起こした場合は関節炎といった症状を示したりすることもあります。

また、猫カリシウイルスの中には従来のものよりも非常に重篤な症状を起こし、致死率も半数以上と非常に高いものも報告されています。

 

犬や猫の口内に異常を発見したら早めに診察を!

動物病院
愛犬や愛猫の口腔病は、ご紹介したもの以外にもさまざまな種類のものがあります。

より細かく分類することもできますが、共通して言えるのは、愛犬や愛猫の口腔内にこういった異常が確認されたときは早めに対処することが必要ということです。
 
症状が出るのが口腔内のため、悪化すると食事や飲水を難しくするものも多く、場合によっては愛犬や愛猫の命にも関わってきます。

普段から口腔ケアをしっかりと行うようにし、異常がみられたときはなるべく早い段階で動物病院へ連れていき、獣医師の診察を受けるようにしましょう。

 

医者

 

まとめ

愛犬や愛猫がかかる可能性がある病気のうち、口腔病は軽視できないものの1つであると言えます。

日頃の口腔ケアで発症する確率を下げることはできますが、100%の予防は難しく、場合によっては発症してしまうこともあります。

症状が口腔内にあらわれるため、発見が遅れて悪化すると食事や飲水にも悪影響が出たり、毒素が全身に回って全身性の症状が引き起こされたりし、最悪の場合は愛犬や愛猫の命にも関わります。
 
そのため、日頃からしっかりと口腔ケアを行って異常がないか確認し、口腔病が疑われる何らかの異常を発見したときは速やかに動物病院へ連れて行くのが大切になってきます。

愛犬や愛猫の口腔病にはどのようなものがあるのかをしっかり把握して早期発見できるように備え、早いうちに治療できるようにしておきましょう。