犬の肝臓の数値が高いのはなぜ?原因・疑われる病気・対処法を解説

犬や猫の肝臓の数値が高い時に疑われる病気ってなに?実は病気じゃない可能性も?愛犬の健康診断でこんなことを言われ、不安になっている方もいらっしゃると思います。
 

女医

肝臓の数値が高いですね

女医

ALPが高いのが気になりますが、まあ、経過観察しましょうか

 
「何か深刻な病気?」と心配になるでしょう。
また、肝臓の数値は「ALT」「ALP」「AST」などの項目で測られますが、それらが高いと言われても、何が問題かわからない方がほとんどじゃないでしょうか。
 
そこで、この記事では検査の各項目が何を意味するのか数値が高くなる原因・疑われる病気、そして対処法をわかりやすく解説します!

 

【前提】肝臓の数値異常に気付いたら即対処!

肝臓の数値異常肝臓について、「沈黙の臓器」と呼ばれていることを知っている方もいらっしゃるでしょう。
 
実際のところ、肝臓病は症状が出た段階ですでに進行しているケースが多いという特徴があります。
肝臓は栄養の合成・貯蔵・解毒・胆汁分泌など生命維持に欠かせない機能を担う大事な臓器であるにもかかわらず、かなり悪くなるまで症状を表に出さないのです……。
 
つまり、検査の数値異常の段階で対処できるかどうかが大切です!

 

検査で見る肝臓の数値「ALT」「ALP」「AST」「GGT」とは?

肝臓の検査では、主に「ALT」「ALP」「AST」「GGT」という4項目が見られることになります。
それぞれ正式名称は以下の通りです。

ALT(GPT) アラニンアミノトランスフェラーゼ
ALP アルカリホスファターゼ
AST(GOT) アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ
GGT(γ-GTP) γ-グルタミルトランスフェラーゼ

とはいえ、「項目名を聞いてもよくわからない」という方も多いはず……。
そこで、まずはそれぞれ何を意味しているのか、一覧でまとめました。
 

項目 何を反映するか 高い場合の疑い 犬特有の注意点
ALT 肝細胞のダメージ ・慢性肝炎
・脂肪肝
・急性肝障害
犬では肝臓特異性が高い
60〜100 U/L が継続→慢性肝炎疑い
ALP 胆汁の流れ・肝臓・骨・腸の状態 ・胆泥症
・胆のう粘液嚢腫
・クッシング症候群
犬は特に ALP が上昇しやすい
ステロイド投与・クッシング症候群・成長期でも上昇
AST 肝細胞や筋肉・心臓などのダメージ ・肝炎
・筋肉疾患
・心疾患
ALT と合わせて評価する。
・AST のみ高い→心臓、筋肉が悪い可能性がある
・ALT のみ高い→肝臓が悪い可能性が高い
・両方とも高い→多臓器に及ぶ疾患の可能性がある
GGT 主に胆管周辺の異常 ・胆管炎
・胆管閉塞
ALP と同時に高い→胆管閉塞など進行した病気を疑う

 
ここからもわかるように、「数値が高い=重病」と決まりきっているわけではありません。
たとえばALTは成長期の犬で高い数値を示すことがありますし、ちょっとしたストレスが原因に過ぎないこともあります。
1回の検査だけで判断せず、経過観察・再検査が必要なことも多いです。

 

【犬の肝臓の数値が高い原因】疑われる病気と一時的な要因

まず、疑われる病気の中でも特に深刻な部類に入るのが、肝臓・胆のうの疾患です。
以下、疾患名数値が高くなりやすい項目をまとめました。
 

疾患名 上昇しやすい項目 特徴・補足
慢性肝炎 ALT・AST 最も多い肝臓疾患。
ウイルス・細菌・免疫異常・薬剤等が原因。
コッカースパニエル・ラブラドールは遺伝的素因あり。
急性肝炎 ALT・AST(急上昇) キシリトール・玉ねぎ等の中毒、ウイルス感染などで急激に発症。
早期治療が重要!
脂肪肝 ALT・ALP 肥満・糖尿病・ステロイド長期投与などで肝臓に脂肪蓄積。
食事管理で改善できる場合もある。
肝硬変 ALT・ALP・GGT 慢性肝炎の末期。
線維化が進み肝機能が大きく低下する。
完治が難しい。
胆泥症 ALP 胆汁がドロドロになった状態。
無症状のことも多いが、進行すると胆のう炎・破裂のリスクあり。
胆のう粘液嚢腫 ALP(激しく上昇) 胆のうに粘液が蓄積して起こる。
シェットランド・シープドッグ・ミニチュアシュナウザーで多い。
破裂リスクがあり、外科手術が必要になることもある。
肝臓腫瘍・肝がん ALT・ALP・GGT 中高齢犬に多い。
良性(結節性過形成)の場合もある。
エコー・CT 等での精密検査が必要。
門脈シャント ALT・胆汁酸 先天性の血管異常。
若い小型犬(ヨーキー・マルチー等)に多い。
成長障害・神経症状を伴うことがある。

 

肝臓以外の疾患

肝臓の数値が高いからといって、必ずしも肝臓の病気とは限りません。
犬の場合、特に以下の疾患が、肝臓検査の数値の高さにつながることがあります。

疾患名 主に上昇する項目 特徴
クッシング症候群
(副腎皮質機能亢進症)
ALP(激しく上昇) 犬で ALP が高い場合、特に疑われる疾患。
中高齢犬に多い。
多飲多尿・腹部膨満・脱毛などを伴うことが多い。
糖尿病 ALT・ALP インスリン不足で肝臓に脂肪が蓄積し、数値が上昇する。
膵炎・高脂血症 ALT・ALP 膵臓の炎症が肝臓に波及することがある。
脂肪の多い食事が誘因になることもある。
甲状腺機能低下症 ALP 甲状腺の機能が低下→高脂血症→肝臓に脂肪蓄積で数値が上がる。
歯周病 ALT・ALP 口腔内の細菌が血流に乗り、肝臓に影響することがある

 

病気ではない一時的な要因

以下のように、病気ではないものの一時的に数値が高くなることもあります。
 

要因 主に影響する項目 補足
ストレス・興奮 ALP コルチゾール(ストレスホルモン)分泌により上昇。
採血時のストレスでも変動することがある。
食後の採血 ALT・ALP 絶食せずに採血すると数値が高く出ることがある。
健診は絶食状態で受けることが大事!
ステロイドなどの薬 ALP(激しく上昇) ステロイドはALPを著しく上昇させる。
服用中は定期的な血液検査で経過観察を!
成長期 ALP 骨の成長で上昇する。
若い犬の上昇は成長由来の可能性がある。
体質 ALP シベリアンハスキー・スコティッシュテリアは遺伝的に高くなりやすい。
食事・サプリメントの影響 ALT・ALP 食事・サプリメントが肝臓に負担をかけることがある。
中止で正常化する例もある。
⚠️

「前回から数値が上がっている」「複数項目が同時に高い」「ALTが100 U/Lを大きく超えている」といった場合は精密検査(エコー・CT等)が必要です。
1つの数値だけで判断せず、総合的に評価してもらうことが大切です。

 

数値が高かった時は動物病院で精密検査を!

冒頭でも紹介したように、肝臓はよほど悪くならなければ症状をあらわさないため、早めの対処が欠かせません。
数値が高いという結果が出た場合は、ひとまず行動を起こしましょう!
具体的には、動物病院で精密検査を受ける必要があります。
以下に、緊急度推奨アクション(すべきこと)をまとめました。

数値の状態 緊急度 推奨アクション
基準値をわずかに超えている(初回) 1〜2 ヶ月後に再検査。
食事・薬・ストレス等がないか確認する。
複数項目が同時に高い 追加検査(エコー・胆汁酸測定等)を実施。
原因の特定を急ぐ!
ALT が 100 U/L を大きく超える 中〜高 精密検査(エコー・CT・場合により肝生検)を実施。
早めに受診!
黄疸・腹水・急激な元気消失を伴う すぐに動物病院へ!
肝不全・胆のう破裂の可能性がある。

 

食事・生活環境の改善

以下にまとめるように、普段の生活を見直すことも大切です。

 

低脂肪・高品質タンパクの食事に切り替える

脂肪分の多い食事は、肝臓への負担を増やします。
消化しやすい良質なタンパク源を中心としたフードに切り替えることで、肝臓が本来の働きを取り戻しやすくなります。

 

肥満がある場合は体重管理を優先する

体重が重いほど、肝臓への負担も大きくなります。
ただし、極端な食事制限はかえって体調を崩す原因になるため、獣医師と相談しながら適正体重を目指しましょう。

 

合わない可能性があるサプリは一時中止・経過観察

サプリメントの成分はすべて肝臓で処理されます。
数値が上がったタイミングと、サプリを始めた・増やしたタイミングが一致している場合は、いったん中止して数値の変化を確認してみてください。

 

ストレス要因を減らす

慢性的なストレスは、コルチゾールというホルモンを分泌させ、ALPの上昇につながることがわかっています。
散歩の時間・生活リズムを整えることが、数値の安定にも影響します。

 

定期的な血液検査で数値の推移を追う

1回の検査結果だけで判断するのではなく、数値がどう変化しているかの流れを見ることが重要です。
異常が見つかった場合は1〜3ヶ月ごとの検査が目安となります。
また、シニア犬(7歳以上)は半年に1回の受診を習慣にしましょう。

 

よくある質問

Q. 肝臓の数値が高いと余命に影響しますか?

A. 数値が高いからといって、すぐに余命が短くなるわけではありません。

ただし放置することで病気が進行するリスクはあります。
肝臓は沈黙の臓器であるため、早期発見・早期治療が予後を大きく左右します。

 

Q. ALPだけが高くてALTは正常です。深刻ですか?

A. ALPはクッシング症候群・ステロイド投与・成長期・犬種特性など肝臓以外の要因で上昇することが多い項目です。
 
ALTが正常であれば、肝細胞そのもののダメージは少ない可能性があります。
ただしクッシング症候群の可能性は必ず確認してもらうことをおすすめします。

 

Q. 数値が高いのにまったく症状がありません。大丈夫ですか?

A. 肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれるほど症状が出にくく、無症状でも異常が進行していることがあります。
 
症状がないからといって放置せず、エコー等での精密検査を受けることを推奨します。

 

Q. 食事を変えると数値は下がりますか?

A. 脂肪肝や食事由来の肝臓負担であれば、食事改善で数値が改善するケースがあります。
 
ただし食事変更だけで対処できる場合と、治療が必要な場合があります。自己判断せず、獣医師の指示のもとで進めてください。

 

Q. どのくらいの頻度で血液検査を受ければいいですか?

A. 健康な成犬は年1回が目安です。
 
数値異常が見つかった場合は1〜3ヶ月ごとの経過観察が一般的です。
シニア犬(7歳以上)は半年に1回の受診が推奨されています。

 

まとめ

今回は、特に犬の肝臓の数値が高いといわれるケースについて解説してきました。


「肝臓の数値が高い=すぐに重病」ではない

肝臓の数値はストレス・成長期など一時的な要因でも上昇する

犬のALPが著明に高い場合はクッシング症候群の可能性を必ず確認する

念のため、早めに精密検査を受けるのがおすすめ!

肝臓病は無症状でも進行していることがあるため、早期発見が重要

 
「沈黙の臓器」と呼ばれる肝臓の病気に対しては、症状が出てから動くのではなく、「数値が高い」という段階ですぐに動くのが大切!それこそが、愛犬の寿命と生活の質を守る最善の手段なのです。