猫の腎臓病新薬、年内実用化へ。25年の研究がついに結実
猫の死因1位とされる腎臓病について、ついに根本的な治療薬の実用化が現実となってきました。
AIM医学研究所が開発する新薬の治験が完了し、早ければ年内の実用化も視野に入っています。
長年「治らない病気」とされてきた猫の腎臓病に、新たな治療選択肢が加わることになります。
目次
いつから使える?販売までのスケジュール
新薬の治験はすでに完了。4月にも農林水産省に承認申請する予定です。
承認が順調に進めば、早ければ年内の実用化も期待できます。
AIM医学研究所の宮﨑徹所長は「できる限り早く実装したい」と意気込みを示しています。
販売名が「FeliAIM(フェリエイム)」に決定!
宮﨑徹所長は「販売名の公募を行っている」としていましたが、2026年2月22日にその結果が発表されました。
全国4,931名から寄せられた10,132件の提案を審査した結果、正式な販売名は「FeliAIM(フェリエイム)」に決定しています。
ラテン語で「猫」を意味する「Felis」と、薬の主成分である「AIM」を組み合わせたもの。イタリア語で「喜び」「幸せ」を意味する「Felice」の響きも込められているそうです。
「皆さんと一緒に作ってきた薬」という宮﨑所長の言葉通り、名前もまた、猫を愛する人たちと一緒につくったものとなりました。
猫の腎臓病の現状
そもそも猫は5歳頃から泌尿器系の疾患(主に腎臓病)による死亡率が高まり始め、15歳では腎臓病が死因の第1位となります。
アニコムグループの調査によると、15歳の猫では29.2%が腎臓病で亡くなっています。
これまで根本的な治療法がなく、多くの飼い主が愛猫の腎臓病に不安を抱えてきました。
参考元:アニコム家庭動物白書2023
新薬は既存の治療法とどう違う?
これまでの猫の腎臓病治療は、症状を緩和したり進行を遅らせることが中心でした。
しかし新薬は、根本的な原因にアプローチするという点で大きく異なります。
新薬の主成分はAIM(Apoptosis Inhibitor of Macrophage)というタンパク質です。
AIMはもともと多くの動物の体内に存在し、腎臓に蓄積した老廃物を免疫細胞(マクロファージ)に取り込ませて除去する「体の掃除機能」の役割を担っています。
ところが、猫は先天的にAIMが働きにくい体質を持っており、腎臓に老廃物がたまりやすい状態が続きます。
これが猫に腎臓病が多い根本的な原因のひとつと考えられています。
新薬は「体の掃除機能」を外から補完することで、腎臓にたまった老廃物の除去を促進し、病気の進行を根本から食い止める仕組みです。
どれくらい効果がある?治験での改善結果
治験は4段階ある腎臓病ステージのうち、2番目に重い「ステージ3」の猫を対象に実施されました。
新薬を2週間おきに数回投与した結果、病状の進行がストップし、全身状態が改善しました。
また、これまでの研究成果では、通常は数カ月しかもたないとされる「ステージ4」の猫でも症状の改善が維持され、投与後5年以上元気に生存している例も報告されています。
査読論文で生存率の改善データが公表されました
2026年1月、AIM投与の臨床的効果を検証した研究論文が国際的な獣医学誌「The Veterinary Journal」に掲載されました。
研究チームは進行した慢性腎臓病(クレアチニン値2.9〜5.0 mg/dL)の猫26頭を「AIM投与群」と「非投与群」に分け、360日間の生存率を追跡しました。
結果は以下の通りです。
試験の結果
非投与群は、平均(中央値)で生存日数が167日にとどまりました。
一方、AIM投与群は360日時点の累積生存率が以下のようになりました。
83%
80%
また、以下の結果も出ています。
この研究は探索的な試験であり、今後の本格的な治験での検証が引き続き行われます。
しかし、進行した腎臓病の猫に対するAIMの有効性を科学的に裏付ける重要なデータとして、世界の獣医学界から注目を集めています。
どんな猫に使える?対象となる症例
今回の治験で「ステージ3」での有効性が確認されたことで、重症化していても効果が期待できることが示されました。
将来的には、より早期の段階や予防的な使用についても検討される可能性があります。
ただし、具体的な適用基準や使用方法については、承認後に詳細が明らかになる見込みです。
安全性や副作用は大丈夫?
新薬の主成分であるAIMはもともと多くの動物の体内に存在するタンパク質であるため、安全性は比較的高いと考えられています。
投与方法は注射で、2週間おきに数回の投与が基本となります。
これまでの研究において、深刻な副作用は報告されていません。
ただし、抗体ができて効きにくくなる可能性については今後の検証が必要とされています。
新たな希望への期待
約25年にわたるAIM研究がついに実を結び、猫の腎臓病に新たな治療選択肢がもたらされることになります。
販売名もまた、全国の愛猫家と一緒につけた「FeliAIM(フェリエイム)」として、多くの人の願いを背負っています。
長年「宿命の病」とされてきた猫の腎臓病に、科学の力で立ち向かう道筋が見えてきました。
参考文献
ネコの腎臓病新薬、早ければ年内にも実用化へ 治験終了、4月には国に承認申請
腎臓の働きを改善する遺伝子「AIM」でネコの寿命が2倍に!?
A clinical impact of apoptosis inhibitor of macrophage on feline chronic kidney disease