犬の心不全の原因はなにがある?予防することはできる?
今回のテーマは「犬の心不全」です。
犬も人間と同様、心不全を発症することがあります。
ここでは、犬の心不全が起こる原因や予防について、どの時点で早期発見できるのかをまとめてみました。
現在、犬と一緒に暮らされているすべての飼い主さんに知っていただきたい内容となっていますので、ぜひ最後までご覧いただければと思います。
心不全の種類
心臓には全身の血を循環させるポンプのような役割がありますが、このポンプの機能が弱く、血の巡りが悪くなっている状態を「心不全」といいます。
ここでは、そんな心不全の種類とその特徴について説明します。
右心不全と左心不全
犬の心臓は、人間と同じく「右心房」「右心室」「左心房」「左心室」に分かれています。
「右心不全」は右心側の機能が低下するもの、「左心不全」は左心側の機能が低下するものです。
このうち、とくに注意したいのは「左心不全」です。
左心不全は重度になると、肺水腫や、腹腔内に液体がたまる「腹水肺水症」を患う可能性があり、非常に危険であるためです。
急性心不全と慢性心不全
心不全には、急激に心機能が低下する「急性心不全」と、ゆっくりと心機能が低下していく「慢性心不全」の2種類があります。
とくに危険度が高いとされているのは「急性」の心不全です。
急激に心機能が低下してしまうため身体へのダメージが大きく、命を落としやすいといわれています。
犬の心不全が生じる原因
心不全が起こる原因はさまざまです。
ここでは、犬に心不全が起こる原因を6つ説明します。
これまで健康だった犬や若い犬でも起こりえる原因も含まれているので、よく確認しておきましょう。
僧帽弁閉鎖不全症
心臓の左側(左心房、左心室)を仕切っている部分を「僧房弁」と呼びます。
僧房弁は、心臓を循環する血液が一方通行になるよう管理する役割を果たしているのですが、その働きが悪くなると心臓内で血液の流れが悪くなり、左心に強い負担がかかります。
この状態が「僧帽弁閉鎖不全症」で、肺水腫などの病気につながるリスクがあります。
なお、この症状は犬が心不全を起こす原因の中で最も多くみられるものとされています。
心タンポナーデ
心臓には、もともと「心のう液」と呼ばれる液体が流れています。
この心のう液や血液が何らかの理由で心臓を覆っている心膜や心臓の内部に溜まってしまう状態を「心タンポナーデ」といいます。
多くの場合、心臓にできた腫瘍が原因で心タンポナーデになるといわれていますが原因不明の場合もあります。
拡張型心筋症
拡張型心筋症は心臓の筋肉が伸びてしまうことで心室が以上に拡張し、収縮機能が弱まる病気です。
拡張型心筋症も犬の心不全の原因としてよく見られるもので、とくに体の大きな大型犬に多い病気だといわれています。
また、特定の犬種、特定の家系で発症する傾向が強いことから、遺伝性の病気であると考えられます。
動脈管開存症
「動脈管」とは、犬が母体の中にいる頃に開通した大動脈と肺動脈をつなぐ血管のことです。
誕生後、普通であれば自然に動脈管は閉じていくのですが、塞がらずに残ったままになることがあります。
これが「動脈管開存症」で、適正な処置を行わなければ1年以内に心不全を発症し、死亡する場合があります。
参考元:動脈管開存症(PDA)
肺動脈狭窄症
通常、全身を巡った血液は心臓に戻り、肺動脈を通り、肺へと送り出されます。
しかし、生まれつき肺動脈が狭いことがあります。この状態によって起こるのが「肺動脈狭窄症」です。
軽度な場合は治療をしなくても問題ありませんが、重症の場合は高い確率で心不全に陥るため、手術が必要となります。
フィラリア症
フィラリア症とは、蚊を介して犬の心臓や肺動脈に「フィラリア」が寄生する病気のことをさします。
フィラリアは、成虫になると数十cmの長さになります。
このフィラリアが心臓に寄生することで、血液の循環機能が低下し、心不全を起こします。
適切な予防をしていればそもそもフィラリアに感染することはありません。
一方、対策をしていない場合、約20%の確率で感染するといわれています。

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犬の心不全は予防することができる?
心不全の原因となる病気の中には先天性のものも含まれるため予防ができません。
ですが、お伝えした原因の中で1つだけ予防ができるものがあります。
それが「フィラリア症」です。
フィラリア症は、予防薬を投与することで100%防ぐことができます。
- 錠剤
- チュアブルタイプ
- スポットタイプ
- 注射
さまざまな方法で予防ができるため、犬を飼っている方は必ずフィラリア対策をしましょう。
犬の心不全は検査でわかる?
心不全が起こると、次のような症状が現れます。
- 疲れやすくなる(元気がない)
- 食欲がない
- 呼吸が速くなる
そんな心不全は聴診やレントゲン、超音波検査などの検査で見つけることが可能です。
思い当たる症状がある場合は、早急に動物病院で検査を受けましょう。
定期検査を受けることが大事
人間と同じで、犬も定期検査を受けることで早期発見が可能になります。
とくに、慢性心不全を患っている犬の場合、定期的な検査をして状況が悪化していないかどうかを確認する必要があります。
慢性心不全はどの犬種、年齢でも発症する可能性があるため、最低でも年に1回は定期検査を受けるようにしましょう。
早期発見はどの時点でわかる?
慢性心不全はLEVEL1~4と段階が分かれています。
定期検査を受ければ「LEVEL1」の状態でも見つけることができるので、ぜひ受けてみてください。
とくに、次のような洋犬で、なおかつ高齢の犬は心不全が起こりすいため要注意です。
- チワワ
- トイプードル
- ポメラニアン
- ヨークシャーテリア
- ミニチュアダックスフント
- キャバリア
- キングチャールズスパニエル
早期発見できれば完治は可能?
徐々に進行していく慢性心不全の場合、早期発見・早期治療によって改善が可能です。
しかし、心臓の機能は一度ダメージを負うと、なかなか健康な状態に戻すことができません。
「早期発見・早期治療で改善は可能だが完治することはない」ということを念頭に置き、定期的なフィラリア予防を行い、定期検査を受けるようにしてください。
まとめ
今回は犬の「心不全」を取り上げ、解説を行いました。
心不全の理由はさまざまですが、日ごろの対策がどれだけ大事であるかということをおわかりいただけたのではないかと思います。
ポイントをまとめると、以下の通りです。
- 心不全にはさまざまな種類がある
- 心不全が起こる原因の中で、事前の「予防」「対策」ができるのは「フィラリア症」のみ
- 心不全は早期発見が重要のため、定期的な検査が有効
犬は、自分の体の不調を声に出して説明することができません。
そのため、日ごろの検査によって早期回復」を目指すことはとても重要となります。
「うちの子はまだ若いから大丈夫」などと思わず、どの年齢、犬種であっても定期検査を受けましょう。