犬回虫が人にも感染するってホント!?感染しないための予防法とは?
愛犬の健康管理のために重要な予防の一つである寄生虫予防。
飼い主の方の中には、愛犬に飲ませる薬の数をできるだけ減らしたい、そもそも寄生虫予防は本当に必要な予防なのかと疑問に思っている方もいるかもしれません。
犬に寄生する寄生虫の中には人間にも寄生する場合もあり、愛犬の寄生虫予防を疎かにしていたら飼い主も寄生虫の被害を受けていたという事態に陥る危険性があります。
人にも感染するおそれがある寄生虫はどのようなものがいるのか、どのように予防すればいいのか、ご説明します。
目次
犬回虫は人に感染するってホント?
犬に寄生する寄生虫が人間にも本当に感染するのか、答えから述べると本当です。
犬回虫によって引き起こされる回虫症は人獣共通感染症の一つに数えられており、特に気をつけたい病気の一つとして数えられています。
人間に感染した場合、回虫の幼虫は成虫にならず、何ヶ月間も体内で生存して組織間を移り、炎症や損傷を引き起こすため非常に厄介です。
肝臓や肺といった本来なら寄生しない臓器にも移行して症状を引き起こすことがあるため、注意が必要です。
犬にも人にも感染する可能性のある内部寄生虫
人間にも感染する可能性がある寄生虫は大きく分けて、外部寄生虫と内部寄生虫に分類できます。
このうち、感染するとより厄介なのは内部寄生虫で、感染すると厄介な症状を引き起こすものがほとんどです。
その中で代表的といえるのが犬回虫、犬鉤虫、フィラリアの3種類です。
犬回虫
犬に寄生するおそれがある内部寄生虫のうち、もっとも有名といえるのが犬回虫です。
オスで体長4~10cm、メスで体長5~18cmの白色から淡黄色をした線虫類の1種で、世界的に幅広く分布しています。
主に口から虫卵が侵入することで感染し、最終的に小腸へ寄生して成虫になり、糞便と一緒に虫卵を排泄し、感染を広げます。
感染しても多くの場合は無症状ですが、軟便や下痢、嘔吐といった消化器症状を引き起こす場合があります。
特に子犬は重症化しやすく、栄養不良や全身状態の悪化などにつながる傾向があるため注意が必要です。
参考元:犬回虫(蛔虫、かいちゅう)症
犬鉤虫
犬鉤虫は体長1~2cmという小さな寄生虫で、口に3対の大きな鉤を持っている線虫類です。
犬が鉤虫の虫卵に汚染された土や砂を掘ったり遊んだりしている間に幼虫を飲み込んだり、散歩中に足先から幼虫が侵入したりすることによって感染します。
体内に侵入した幼虫は犬の体内で成虫になって小腸の壁に鉤を引っかけ吸血し栄養を摂取しながら産卵し、感染を広げます。
そのため、鉤虫に感染すると血便や下痢、貧血、食欲不振などの症状があらわれ、感染した犬が幼いほど重篤な症状になりやすい傾向にあります。
フィラリア
フィラリアは別名を犬糸状虫といい、成虫で体長20~30cmという細長い糸状の体をした寄生虫です。
蚊を媒介して感染を広げるのが特徴で、蚊の体内で感染力を持つ小虫に成長し、その蚊が犬を刺した際に体内へ侵入して寄生します。
皮下組織や筋肉組織の中で成長しながら体内を移行し、血液の流れに乗って最終寄生場所である心臓を目指します。
心臓に寄生したフィラリアは交尾を行うことで毎日ミクロフィラリアを生み、寄生している犬が蚊に刺されることで感染を広げます。
また、心臓から溢れた場合は肺動脈にも寄生して乾いた咳や腹水、運動を嫌がるなどの症状を引き起こして最終的に死に至らしめます。
感染したばかりの頃は無症状なので感染しても気づきにくく、目に見える症状があらわれた頃には悪化していることも多いので日頃の予防が重要です。
参考元:フィラリア予防
犬鉤虫やフィラリアは人に感染しにくい!?
犬回虫と同様に、犬鉤虫やフィラリアも人間に感染する可能性があります。
しかし、犬鉤虫もフィラリアも犬を寄生対象としているため、人間に寄生することはめったにありません。
特にフィラリアの場合は人間が感染すること自体がそもそも稀です。
また、犬鉤虫も人間に寄生してもしばらくすると死滅するため、人間はこれらの寄生虫による感染症にかかりにくいといえます。
しかし、仮に感染した場合、フィラリアは肺梗塞病変を作って咳や胸の痛みを、鉤虫は一時的な皮膚炎や皮膚のかゆみなどの症状を引き起こすことがあるので注意が必要です。
参考元:実は人も危ない!犬フィラリア
飼い主が犬回虫に感染しないようにするためには予防が大事
ご紹介したように、人間も感染する可能性がある寄生虫は犬回虫以外にも存在します。
もっとも警戒するべきは犬回虫といえますが、場合によっては他の寄生虫に感染してしまうおそれもあるため、これらの寄生虫からしっかり己の身と健康を守らなくてはなりません。
そのためにも、まず愛犬に寄生しないように日頃からしっかり予防することが重要です。
犬回虫などの内部寄生虫を予防する方法
先ほども触れたとおり、犬回虫をはじめとした寄生虫から身を守るためには、ともに暮らしている犬が寄生虫に感染しないよう予防することが大切です。
予防と聞くと難しそうに感じてしまうかもしれませんが、犬の寄生虫予防は特別難しいことではなく、すぐに始められるようなものばかりです。
内部寄生虫に感染しないように行動する
犬回虫の感染経路は、経口感染と母子感染の2つに分けられます。
母子感染は犬回虫に感染した母犬から胎盤や母乳を介して子犬へ感染が広がるため、この経路から感染を防ぐのは少々難しい部分があります。
しかし、母子感染しないように母犬が感染しないように予防してあげることは可能です。
また、経口感染の場合は犬が虫卵や幼虫を口にしてしまうことで感染するため、飼い主が愛犬を虫卵や幼虫へ近づけさせないようにして感染を防ぐことができます。
散歩中に他の犬の糞便に近づけさせない、幼虫を持っている可能性があるネズミやミミズ、ゴキブリなどを食べさせないようにして、犬回虫の経口感染を防ぎましょう。
予防薬を使う
内部寄生虫の予防方法で、もっとも一般的かつ確実なのが予防薬を使う方法です。
犬回虫をはじめとした内部寄生虫に対する予防効果がある薬を使うことで、愛犬の体内に侵入した内部寄生虫を駆除して感染を防ぐことができます。
フィラリア予防薬やノミダニ駆除薬の中には、内部寄生虫に対しても効果を発揮するよう作られている種類もあるので、そうした効果がある予防薬を使うことでフィラリアやノミダニだけでなく犬回虫などの予防が可能です。
ネクスガードスペクトラ
ネクスガードスペクトラは、フロントラインシリーズで有名なベーリンガーインゲルハイム社が製造、販売している寄生虫駆除薬です。
アフォキソラネルとミルベマイシンオキシムという成分が有効成分として配合されているチュアブルタイプの予防薬で、愛犬に食べさせるだけでフィラリアとノミ、マダニや犬回虫、犬小回虫や犬鉤虫、犬鞭虫を一度に駆除することができます。
価格は超小型犬用のものが1箱3錠入りで8,760円、1錠あたり2,920円で取り扱われています。
アドボケート
アドボケートは、エランコ社から製造、販売されている寄生虫予防薬です。
チュアブルタイプのネクスガードスペクトラに対し、こちらはスポットタイプで薬液を皮膚に垂らすだけで投与が完了します。
有効成分としてイミダクロプリドとモキシデクチンが配合されており、これらの有効成分がフィラリアやノミ、犬回虫や犬鉤虫、さらにはヒゼンダニも駆除します。
小型犬用が1箱3本入りで5,660円、1本あたり1,887円で取り扱われています。
また、まとめ買いで安価で手に入れることが可能となっていたり、猫用のものもあります。
定期的に虫下し(駆虫薬)を利用する
もし母子感染を起こして犬回虫に寄生されてしまっている場合には、虫下しの使用がお勧めです。
犬用の虫下しは子犬の頃から投与できるように作られているものも多く、胎盤や乳汁から子犬の体内に侵入した寄生虫を死滅させて体外に排出させることで駆除することができます。
また、日頃から定期的に虫下しを投与することによって愛犬の体内をクリーンな状態で保つことができ、内部寄生虫の予防に繋がります。
キウォフプラス
キウォフプラスは、サヴァ・ヴェット社から製造、販売されている虫下しです。
国内でも使われている虫下しであるドロンタールプラスのジェネリック医薬品で、有効成分としてプラジクアンテルやパモ酸ピランテル、フェバンテルという3つの成分が配合されています。
犬回虫だけでなく犬鉤虫や犬鞭虫、瓜実条虫や多包条虫に対して駆虫効果を発揮し、幅広い内部寄生虫を一度にまとめて駆除します。
1箱20錠入りで3,560円、1錠あたり178円という安価な価格で購入できるのが特徴です。
ドロンタールプラス
ドロンタールプラスは、バイエル社やエランコ社から製造・販売されている虫下しで、先ほどご紹介したキウォフプラスの元になった薬です。
有効成分にはプラジクアンテルやパモ酸ピランテル、フェバンテルが配合されており、これらの成分が犬回虫や犬鉤虫、犬鞭虫、瓜実条虫や多包条虫に作用して駆除します。
また、産卵前の未成熟な寄生虫にも効果を発揮するので、より効果的に寄生虫予防を行えます。
1箱6錠入りが3,560円、1錠あたり593円となっています。
キウォフパピー
キウォフパピーは、サヴァ・ヴェット社から製造、販売されている子犬用の虫下しです。
投与しやすいリキッドタイプを採用して作られているのが特徴で直接投与するのはもちろん、食事に混ぜて与えるのも簡単に行えます。
子犬に投与することにより、有効成分のパモ酸ピランテルとフェバンテルが犬回虫や犬鉤虫、犬鞭虫を駆除して寄生虫の影響から子犬を守ります。
ドロンタールパピーのジェネリック医薬品なので価格が安く1本あたり15mLが4,260円で購入することが可能です。
まとめ
愛犬に寄生する内部寄生虫の中には、飼い主である人間にも感染するおそれがあるものが存在します。
その中で代表的といえるのが犬回虫で感染してしまった場合は幼虫のまま体内で長く生存し、肺や肝臓などの臓器や組織間を移行しながら炎症や損傷を引き起こします。
人獣共通感染症の1つにも数えられているため、愛犬だけでなく自分自身の健康を守るためにも日頃からしっかり予防する必要があります。
愛犬の寄生虫予防は、感染源となる他の犬の糞便や待機宿主に近づけないようにするほか、内部寄生虫に対して効果がある薬を投与することによって行えます。
フィラリアやノミ、マダニと一緒に内部寄生虫も駆除できるオールインワンタイプの予防薬や、さまざまな内部寄生虫を駆除できる虫下しを活用し、内部寄生虫の脅威から自分自身と愛犬を守りましょう。