犬や猫に寄生する寄生虫にはなにがいる?どんな感染症を引き起こすの?
犬や猫の飼い主にとって最も大きな脅威のひとつ……それは「寄生虫」の存在でしょう。
寄生虫は、私たち人間にとっても決して無縁な存在ではありませんが、寄生虫の種類によっては犬や猫に住み着きやすいものがいたりしますし、犬や猫は言葉を理解しないため、寄生虫が原因の病気を発症しても飼い主が気づきにくいということもあります……。
では、そんな脅威というべき犬・猫の寄生虫にはどのような種類があるでしょうか?
ここでは、具体的な寄生虫の種類や、引き起こす症状について解説します。
外部寄生虫と内部寄生虫
犬や猫に寄生する寄生虫は、大まかに分けると「外部寄生虫」「内部寄生虫」の2種類です。
字面を見れば何となく違いはわかりそうなものですが、それぞれ具体的にはどのような寄生虫なのでしょうか。
まずは、この2種類についてそれぞれ見てみましょう。
外部寄生虫
外部寄生虫とは、犬や猫の体毛や皮膚に寄生する寄生虫を指します。
文字通り、体の外側に住み着くゆえに“外部”寄生虫というわけです。
代表的な外部寄生虫としては、ダニやノミ、シラミなどが挙げられます。
体をかゆがったり、実際に毛をかき分けてみると虫の姿が確認できたりする場合、適切な対処が必要です。
中には人間にも被害を及ぼすものもいるため、その点でも早めの駆除が肝心です。
内部寄生虫
内部寄生虫は、文字通り犬や猫の内部、つまり体内に寄生する寄生虫を指します。
具体的には、腸などの消化器官、血管などに入り込みます。
回虫や鉤虫、瓜実条虫、さらにはフィラリアなど、種類は多岐にわたります。
腸内や血管内などで犬・猫の栄養分を吸い取って成長・繁殖する寄生虫であり、外側からは存在や種類がわかりにくい点が厄介であるといえるでしょう。
犬・猫に寄生する内部寄生虫
ここからは、特に素人目には特定が難しい「内部寄生虫」について詳しく見ていきましょう。
まずは、犬・猫に共通する内部寄生虫の種類や、その寄生虫によって引き起こされる症状を解説します。
犬回虫・猫回虫
犬・猫に寄生する内部寄生虫として、最も一般的といわれるのが犬回虫・猫回虫です。
外見は白くて細長く、クネクネした糸状の寄生虫で、5~10cm程度。犬や猫の腸内に寄生するという特徴があります。
回虫によって引き起こされる症状
犬回虫や猫回虫は、卵が付着したものを犬や猫が食べることで体内に入り込み、小腸で繁殖します。
症状として特に多く見られるのは、下痢や嘔吐、腹部の膨満などです。
さらに、回虫に体内の栄養を吸収されてしまうため、体重の減少なども見られます。
毛並みのつやがなくなるなど、見た目にわかりやすい症状もあります。
犬鉤虫・猫鉤虫
犬鉤虫・猫鉤虫は体調1~2mm程度の小さな寄生虫で、糸くずのような形状をしています。
回虫と同じく、犬や猫の小腸に寄生して繁殖するという特徴を持ちます。
鉤虫によって引き起こされる症状
犬鉤虫・猫鉤虫による症状は、特に子犬や子猫などで多く見られます。
小腸内で繁殖した鉤虫は犬や猫の血液を主な栄養分として成長・繁殖するため、貧血などの症状を引き起こします。タール状の便が出るという症状も見られます。
また、慢性の下痢に悩まされることもあります。
糞線虫
糞線虫は、2~3mmの内部寄生虫で、主に犬・猫の小腸に寄生します。
主な感染経路としては、幼虫が繁殖した糞便に触れることが挙げられます。
幼虫は皮膚を貫通して体内に入り込み、小腸に落ち着いて成長・繁殖します。
ちなみに、人間も感染する可能性がある内部寄生虫のひとつです。
糞線虫によって引き起こされる症状
感染しても無症状のこともありますが、免疫力が低い子犬・子猫や、何らかの病気で免疫力が落ちている場合は下痢などの症状が引き起こされます。
小さな寄生虫ではありますが激しい症状を引き起こすこともあり、極端に衰弱したり、死に至ったりすることもあります。
コクシジウム
コクシジウムは、顕微鏡でかろうじて発見できる程度の小さな寄生虫です。
上記の回虫や鉤虫と違い、主に消化器官の細胞に寄生して繁殖する「原虫」というカテゴリーに属します。
コクシジウムによって引き起こされる症状
犬や猫がコクシジウムに感染した場合、無症状であるか軽い症状しか見られないことが多いため、存在になかなか気づきにくいという特徴があります。
代表的な症状として挙げられるのは消化器官の不調で、主に下痢が見られます。血液が混じった水便が出ることもありますが、「ちょっと柔らかいかな」くらいの軟便であることも少なくありません。
ジアルジア
ジアルジアは、上記のコクシジウムと同じく「原虫」にカテゴライズされる寄生虫であり、小腸に寄生します。
単細胞の微生物であり、肉眼では発見できません。
また、犬や猫だけでなく人間に感染するケースもあります。
ジアルジアによって引き起こされる症状
ジアルジアによる症状の特徴は、主に子犬や子猫に見られる点です。
成犬や成猫は無症状であることが多く、まれに免疫が下がっている場合に症状が見られます。
主な症状は下痢で、腐敗した油のような鼻を突く悪臭を伴った下痢になるのが特徴です。
瓜実条虫
別名「サナダムシ」とも呼ばれる瓜実条虫は、ノミが媒介する寄生虫です。
体長は大きくて50cmほどにもなるのが特徴で、犬や猫の小腸に住み着いて成長・繁殖します。
瓜実条虫によって引き起こされる症状
瓜実条虫は犬や猫の小腸に住み着き、腸粘膜を噛み破って吸血します。
寄生している瓜実条虫の数が少なければ大きな症状は見られず、まったくの無症状であることも多いですが、一方で下痢や出血などの症状が見られることもあります。
特に瓜実条虫の数が多い場合、出血性腸炎を引き起こすこともあります。
マンソン裂頭条虫
マンソン裂頭条虫は、小さければ数ミリ程度、大きければ実に80cmほどになることもある内部寄生虫で、犬や猫の小腸に寄生します。
特に、猫に感染するケースが多いという特徴があります。
マンソン裂頭条虫によって引き起こされる症状
マンソン裂頭条虫に感染すると、その名も「マンソン裂頭条虫症」を発症します。
多くの場合は無症状ですが、軟便になることもあります。
また、食欲があってさかんにものを食べるのに、なかなか体重が増えない場合、マンソン裂頭条虫症を起こしている可能性があります。
放置すると重症化することがあり、特に寄生虫の数が多い場合は慢性的な下痢に悩まされたり、腸閉塞などを引き起こすこともあります。
フィラリア(糸状虫)
フィラリアは、蚊によって媒介される寄生虫です。
蚊に吸血された際、ミクロフィラリアが体内に入り込み、体内の血管で成長します。
蚊が発生する晩春から秋口に至る長期にわたり、感染リスクがある点に注意する必要があります。
フィラリアによって引き起こされる症状
フィラリアは血管内で成長し、大きくなれば体長20cm程度の糸状になって、犬や猫の心臓付近や肺動脈などに居座ります。
その結果、血行を物理的に阻害することにより、さまざまな症状を引き起こします。
フィラリアが小さいうちは無症状ですが、やがて血管をふさいで咳や呼吸困難といった症状を引き起こし、食欲の大幅な減退などが見られるようになります。放置すれば死に至ることも珍しくありません。
犬に寄生する内部寄生虫
ここでは、特に犬に寄生する内部寄生虫の種類や、引き起こされる症状について見てみましょう。
犬鞭虫
犬鞭虫は、文字通り鞭(むち)のような形状をしている体長5~7cmの寄生虫です。
多くの場合は犬の盲腸に住み着きますが、体内で繁殖して増えると大腸にも住み着き、吸血します。
犬鞭虫によって引き起こされる症状
犬鞭虫は、数が少ないうちはほとんど何の症状も引き起こしませんが、成長・繁殖すると主に消化器障害を引き起こします。
具体的には、下痢や血便などです。重症化すると、おびただしい血便が見られることもあります。
吸血する寄生虫ということもあり、貧血が見られるのも特徴です。
エキノコックス
エキノコックスは、自然界では野ネズミやキツネなどに寄生している寄生虫ですが、食品を介して飼っている犬の体内に入り込み、寄生することもあります。
体長は4mmほどで、人間にも感染する可能性があります。
エキノコックスによって引き起こされる症状
犬に関しては、エキノコックスに感染したとしても症状が見られることはほとんどありません。
症状が顕著に現れるのは人間で、感染後10年以上の潜伏期間を経て発症し、腹部の膨満、発熱、黄疸などが症状として現れます。放置すると死に至ることもあります。
猫に寄生する内部寄生虫
ここからは猫に寄生する寄生虫を解説していきます。
どのような種類の寄生虫がいるのか、どのような症状を引き起こすのか、見てみましょう。
トキソプラズマ
トキソプラズマは「原虫」にカテゴライズされる寄生虫で、極めて小さい単細胞生物です。
豚肉、鶏肉、牛肉などの食肉にも含まれているありふれた寄生虫で、加熱処理をしていない肉を食べるなどすると猫の体内に入り込みます。
猫を介して、人間にも感染する可能性があります。
トキソプラズマによって引き起こされる症状
たいていの場合、猫はトキソプラズマに感染しても無症状のまま天寿をまっとうします。
ただし、まれに急性のトキソプラズマ症を引き起こすことがあり、発熱や食欲不振に始まり、肺炎や下痢、黄疸など全身症状が見られます。
また人間の場合、脳や眼球などに寄生して深刻な症状を引き起こすことがあります。
猫条虫
主に、体内に猫条虫を宿したネズミを介して猫に感染する可能性がある寄生虫です。
ネズミを捕食した際に体内に入り込むというパターンが一般的です。
猫条虫によって引き起こされる症状
健康な猫であれば、猫条虫に感染したとしてもそれほど深刻な症状は見られません。ほぼ無症状のままであるということも珍しくありません。
ただし、まれに下痢や嘔吐などの症状が見られる場合もあります。
また、もともと健康に問題があって免疫力が下がっている場合、貧血などの症状を見せることがあります。
内部寄生虫に感染したかも?と思ったら
犬や猫を苦しめる寄生虫の種類は、実にさまざまです。
中でも内部寄生虫は、外からの見た目で飼い主がなかなか自己判断できないのが厄介なところです。
「でも、見た感じ何となく内部寄生虫に感染してるような……」
そんなときは、まず何をすべきなのでしょうか?
動物病院で検査をする
まずは何といっても、どんな内部寄生虫に感染しているのか、どのような危険があるのか、専門家の見立てを聞くために動物病院へ行きましょう。
病院では、主に犬や猫の便を採取し、観察することで内部寄生虫の有無を確認し、種類を特定します。
顕微鏡で直接チェックする検査方法や、便を飽和食塩水などに溶かし、浮いてきた卵の種類をチェックする方法が一般的です。
ただし、1回の検査では特定できないので何回か受ける必要があったり、見つかりにくい場合があったりする点はあらかじめ押さえておく必要があります。
虫下し用の医薬品で治療する
犬や猫の内部寄生虫は、虫下し用の医薬品で治療することができます。
検査の結果、内部寄生虫の存在が明らかになり、種類が特定されたら、効果的な虫下し用の医薬品を使って駆除しましょう。
なお、虫下し用の医薬品は病院で処方してもらえるほか、海外製品を通販(個人輸入)で入手することも可能です。
ペットの虫下し用の医薬品は通販サイトで購入することができます!処方してもらうよりも手軽に購入することができます!
予防が最も効率的
上記のように、確かに犬・猫の内部寄生虫は虫下し用の医薬品で駆除できます。
しかし、たとえばフィラリアなどは、いったん感染すれば早期に検査・治療しなければ死に至るような感染症を引き起こします。
発覚したときにはもう手遅れ……
となることも考えられます。
そのため、普段から専用の予防薬を使用し、しっかりと予防を行うことが大切です。
ただし、内部寄生虫の中には、予防が難しいものもいます。
予防薬は通販(個人輸入)などでも手軽に入手できますが、何に対して効果を発揮するものであるか、きちんと把握したうえで使用しましょう。
まとめ
今回の記事では、犬や猫に感染する可能性がある寄生虫について解説しました。
特に犬・猫の体内に入り込んで成長・繁殖するタイプの「内部寄生虫」について、代表的なものを列挙し、特徴やよく見られる症状などについてまとめてみました。
犬・猫の内部寄生虫は、小腸など消化器官に寄生することで下痢などの症状を引き起こすものが多いという特徴があります。
無症状や軽度の症状で済むものもありますが、フィラリアなどは放置すれば命にかかわることがあり、また人間にも感染する可能性がある寄生虫もいるため、検査や治療が欠かせません。
動物病院での検査を受けること、適切な虫下し用の医薬品を使用すること、そしてそもそも寄生虫に感染しないように適切な予防をすること……これらを徹底し、ペットや家族の健康を守りましょう。