犬の敗血症とは?飼い主に感染する?原因や治療方法を解説!
今回のテーマは「犬の敗血症」です。
敗血症は犬の種類や年齢、性別に関係なく発症する可能性がある病気で、発症後に命を落としてしまう例も少なくありません。
そんな恐ろしい敗血症について、症状や感染経路などをまとめてみました。
「人に感染するのか?」という疑問にも回答していますので、敗血症についてまだよくご存じではない飼い主さんはぜひ最後までチェックしてみてください。
犬の敗血症ってどんな病気?
そもそも敗血症とは、細菌や細菌が生み出す毒が血液に入り込み、全身に回って多臓器不全やショック症状などを引き起こす病気のことを指します。
また、細菌感染に対する過剰な反応が原因になるケースもあります。
特に、免疫機能が下がっている状態だと敗血症を引き起こしやすい傾向にあります。
健康状態に問題がなく、免疫機能が安定していれば、血液中に細菌などが入ったとしても免疫の働きによって適切に防御できます。
しかし、何らかの原因(すでに何かしらの感染症にかかっている等)で免疫機能が低下している場合、細菌などへの防御をうまく行うことができず、敗血症を引き起こすことになるわけです。
敗血症を引き起こす主な感染症
前述のように、敗血症は何かしらの感染症にかかっている状態で引き起こされるケースがみられます。
ここでは、その敗血症の原因となる感染症についてまとめてみました。
症状別に感染しやすい年齢や性別、特徴なども記載しているので、飼っている犬に該当する点がないか確認しておくようにしましょう。
子宮蓄膿症
子宮蓄膿症は、細菌に感染することで子宮内(子宮内膜など)に膿がたまる病気のことです。
次のような2パターンに分けられます。
- 膿が陰部から排出される「開放性」
- 膿が排出されない「閉鎖性」
特に「閉鎖性」の場合、溜まった膿によって子宮が膨らんで結果的に穴が開いたり破れたりすることがあるため、非常に危険です。
特に、未避妊の犬や高齢の犬に発症しやすいといわれています。
初期のうちは無症状であることが多く、進行することで多飲多尿、腹部膨満、食欲不振、嘔吐などの症状があらわれます。
参考元:犬と猫の子宮蓄膿症
感染性腹膜炎
腹膜炎は腹部の内側、または全体に炎症が起こる病気です。
主な症状に下痢や嘔吐、食欲不振、発熱があります。
ぐったりしていたり、腹部が膨れていたり、お腹が痛そうな様子を見せている場合(お腹を触ろうとすると嫌がる・背中を丸めて小さくなっている等)、注意が必要です。
なお、腹膜炎には病原体による感染が原因となる「感染性」と、そうでない「非感染性」という2種類がありますが、このうち「感染性腹膜炎」は重症化しやすい傾向にあります。
上記のような症状が見られた場合、すみやかに診察を受け、治療を開始することが必要です。
参考元:猫伝染性腹膜炎(FIP)とは
尿路感染症
尿路感染症は、細菌が尿路に侵入することで起こる炎症のことです。
主な尿路感染症として膀胱炎や尿道炎、腎盂腎炎といったものがあげられます。
こうした尿路感染症に感染した場合にあらわれる症状は、次の通りです。
- 血尿
- 有痛性排尿困難
- 無排尿
- 濁った尿が出る
- 食欲不振
- 発熱
ちなみに、犬種別で見るとダックスフントやトイプードル、シベリアンハスキー、ラブラドルレトリバーは尿路感染症になりやすいといわれています。
また、どちらかといえばメスのほうがなりやすいともいわれているため、注意が必要です。
参考元:前立腺肥大・前立腺炎・前立腺膿瘍
前立腺炎
前立腺はオスの犬にのみある器官で、尿道の近くに位置しています。精液に含まれる前立腺液を分泌するのが主な働きです。
そんな前立腺に炎症が起こっている状態を「前立腺炎」といいます。
尿道に入った細菌が原因で発症するケースが多く、尿路感染症から前立腺炎に至ることがあります。
前立腺炎の場合も尿路感染症と似たような症状が見られますが、体に触れられるのを極端に嫌がる、歩き方がいつもと異なるといった症状が見られることもあります。
肺炎
肺の組織に炎症が広がり、十分な量の酸素を取り込めなくなる状態を「肺炎」といいます。
原因は細菌などの病原体によるものや、アレルギー、異物誤飲などとされています。
初期症状は「咳が多い」「興奮すると咳が出やすい」「呼吸音がちょっとおかしい」といった程度ですが、そのまま気づかずに放置していると次のような症状が見られます。
- 呼吸困難になる
- 咳が連続する
- 舌や歯茎が青くなる(チアノーゼ)
チアノーゼは血中に十分な酸素が行き渡っていないことを示す症状で、放置は危険です。
すみやかに動物病院に受診する必要があります。
参考元:肺炎
敗血症になるとどんな症状があらわれる?
敗血症の主な症状は、以下の通りです。
- 発熱
- 食欲不振
- 嘔吐
- 元気消失
- 呼吸速迫(呼吸が異常に早くなる)
さらに、重症化すると低体温に陥ったり、多臓器不全を引き起こしたりします。
内臓(肝臓、腎臓など)の機能が著しく低下して敗血症性ショックを引き起こし、最悪の場合は命を落とすことにつながります。
また、「播種性血管内凝固」が引き起こされるケースもあります。
全身の血管に血栓が形成されて血流を阻害する状態で、血流が著しく悪化します。
敗血症の治療方法
敗血症を引き起こす原因はさまざまですが、いずれも細菌感染がもとになっているので細菌を退治することが必要です。
どのような細菌が原因になっているのか検査によって突き止め、発覚した細菌に対して効果のある抗生物質を投与するのが基本的な治療です。
また、子宮蓄膿症が原因の場合や、細菌感染によって腫瘍が生じている場合は外科的な治療が行われることもあります。
さらに、敗血症性ショックを起こしている場合は、輸液療法を行い、体液の循環を正常な状態に戻す処置を行います。
敗血症は細菌感染が主な原因です。敗血症は早期の治療が必要なので必ず動物病院で診察を受けましょう!ペット用の抗生物質・抗菌剤は通販サイトでも購入することができます!使用している医薬品と同じものがあればぜひ検討してみてくださいね!
敗血症は人にも感染する?
敗血症は細菌感染が原因で起こることが多いため、「飼い犬が敗血症になったんだけど人間に感染する可能性はある?」と不安な方もいるでしょう。
しかし結論からいえば、普通に生活している限り、犬の敗血症が人に感染することはありません。
ただし、犬に噛まれるなどして口腔内の常在菌であるカプノサイトファーガ・カニモルサスが人間(飼い主)の体内に侵入した場合、人も敗血症を発症することがあります。
発熱や頭痛、吐き気、倦怠感などが症状としてあらわれ、重症化すると敗血症に至ります。
まとめ
今回は犬、猫の「敗血症」を取り上げ、まとめてみました。
ポイントは、以下の通りです。
- 敗血症は細菌が血液中に入り込むことで引き起こす
- すでに感染症などの病気になっている状態で発症する
- 最悪の場合、死に至る病気である
- 人に感染することはほとんどない
なお、敗血症の原因のひとつとして挙げた「子宮蓄膿症」は避妊手術によって予防することができます。
避妊手術は義務ではありませんが、敗血症以外にも婦人科系の病気(ガンなど)の予防につながるため、基本的に推奨されています。
出産させる予定がないという場合は、この機会に検討してみるとよいでしょう。
また、敗血症は放置して治る病気ではありません。
「様子見をしよう」などと考えず、敗血症の症状が疑われる場合は、早急に獣医の診断を受けましょう。