犬・猫の細菌性腸炎の症状・原因・治療まとめ|どのくらいで治る?自然治癒は?

犬や猫の細菌性腸炎の原因とは?急な下痢や嘔吐には要注意!
「うちの犬がずっと下痢嘔吐を続けていて、心配です……」
「飼ってる猫が腸炎っぽいんだけど、自然に治るかな?」
 
それが「細菌性腸炎」である場合、自然治癒するかどうかは微妙なところです。
症状の重さによっては入院が必要だったり、細菌性腸炎に見えて実はまったく別の病気の可能性もあるからです。
また、犬と猫ではリスクが異なるという点も押さえておく必要があります。
 
この記事では、犬と猫それぞれの視点から細菌性腸炎について詳しく解説します!

 

犬・猫が細菌性腸炎になったらどんな症状が出る?

細菌性腸炎とは、文字通り細菌の感染による腸の炎症を指します。
腸の機能が低下し、消化機能に異常が生じて下痢や嘔吐をもたらすわけです。
 
では、そんな細菌性腸炎の具体的な症状とは?

 

犬の細菌性腸炎の症状

犬が細菌性腸炎になると、以下のような症状があらわれます。
 

症状 程度・頻度 注意点
水様性・軟便・粘液便 最も多い 1 日に何度も繰り返す場合は要注意
血便 中〜重症でみられる 出血性胃腸炎(HGE)との鑑別が必要
嘔吐 下痢と併発することが多い 食欲があっても吐く場合がある
発熱 細菌感染時に起こりやすい 38.5℃以上が目安
元気消失・食欲不振 重症化のサイン ぐったりしている場合は緊急受診
脱水症状 重症化すると出現 皮膚をつまんで戻りが遅い・口腔粘膜乾燥

 

⚠️

出血性胃腸炎(HGE)は細菌性腸炎と症状が似ていますが、急速に悪化することがあります。
血便・嘔吐・元気消失が重なる場合は緊急受診が必要です。

 

猫の細菌性腸炎の症状

次に、猫の症状も確認してみましょう。
 

症状 程度・頻度 注意点
下痢・軟便 最も多い 猫は犬より症状を隠しやすいため発見が遅れることがある
嘔吐 頻発することがある 猫はもともと嘔吐が多いため見過ごされやすい
血便・粘液便 中〜重症でみられる
食欲不振 重症化のサイン 2 日以上続く場合は受診を
体重減少 慢性化すると出現 急性なら気づきにくい。慢性化を示すサイン
元気消失 重症化・慢性化のサイン 腹痛で動かない場合がある

 

⚠️

「また毛玉を吐いた」と見過ごしやすいのが猫の怖いところです。
嘔吐・下痢が繰り返す場合は、細菌性腸炎以外の深刻な病気が隠れている可能性があります。

 

治療方法は?どのくらいで治る?自然治癒はする?

細菌性腸炎は、原因となる細菌の活動を抑制することで治療できます。
 

主な原因菌
サルモネラ菌
カンピロバクター
クロストリジウム

 
このうちカンピロバクターやクロストリジウムはもともと犬・猫の腸内にいる細菌(悪玉菌)であり、善玉菌が優勢になれば自然に治ることもあります。
一方、重症化した場合は症状に見合った治療が必要です。

 

重症度別の治療方針

重症度 治療方法 期間の目安 判断基準
軽症 内服薬(抗生剤・整腸剤・下痢止め・吐き気止め) 1 週間程度で改善 ・下痢がみられる
・嘔吐があっても食欲あり
・元気がある
中等症 内服薬 + 皮下点滴(通院) 1〜2 週間程度 ・食欲低下や嘔吐が続く
・軽度の脱水
重症 静脈点滴 + 入院管理 1 週間程度の入院 ・ぐったりしている
・脱水
・血便
・食事不可

 
なお、内服薬を飲んでも症状が改善しない場合は、細菌性腸炎とは別の病気を発症している可能性があります。
その場合は再度検査を行い、原因を特定した上で適切な処置が必要です。

 

ホントに自然治癒する?自己判断で大丈夫?

「細菌性腸炎は、軽症であれば自然に回復することもある」
 
これは事実です。
ただし、自己判断で「すぐ治るだろう」と思い込むのはNG!
 
というのも、「そもそも細菌性腸炎なのか」を判断するのは、多くの動物を診てきた獣医師でも難しいとされているからです。
すぐ治る軽度の細菌性腸炎かと思いきや、実は寄生虫ウイルスによる消化器症状、または放置すると危険なIBD(炎症性腸疾患)や小細胞性リンパ腫だった……という可能性もあるのです。
様子を見るつもりが、うかうかと重症化させて取り返しのつかない結果になることも……。
 
というわけで、1〜2日で改善しない・元気がない・血便があるという場合は、迷わず受診してください。

 

こんな症状が出たら緊急受診!

症状 理由 犬・猫の違い
血便・黒色便 出血・重症化のサイン 犬:出血性胃腸炎の可能性
猫:重症化が速い
嘔吐が止まらない(1 日 3 回以上) 脱水・重症化リスク 猫は特に脱水に弱い
ぐったりしている・動かない 重症化・腹痛のサイン 両種とも緊急
2 日以上改善しない 自然治癒が難しいサイン 猫は 1 日で判断推奨
子犬・子猫・高齢・持病あり 重症化リスクが高い 体力が低い分、経過が速い

 

細菌性腸炎と似た症状があらわれる病気

軽症の細菌性腸炎かと思っていたら、重症化リスクがある別の病気だった……。
 
その代表的な例をまとめておきましょう。

 

寄生虫による感染

回虫、鉤虫、鞭虫といった消化管内寄生虫に感染することで、下痢や嘔吐などの症状があらわれることがあります。
これらの寄生虫は自然に死滅することはなく、時間が経つにつれて体内で繁殖し、重篤な症状を引き起こす可能性もあるため、確実に駆虫する必要があります。
 
なお、消化管内寄生虫はあらかじめ予防が可能です。
毎月飲ませるフィラリア予防薬に消化管内寄生虫を一緒に叩ける「オールインワンタイプ」があるので、不安な方はそのような薬を選びましょう。
 
詳しくは以下の記事でまとめています。
 

 

ウイルスの感染

パルボウイルス(CPV)ジステンパーウイルス(CDV)といったウイルスによって、下痢・発熱・嘔吐などの症状が起こることがあります。
 
パルボウイルスは、すでに感染している他の犬猫の嘔吐物や便から感染します。
また、ジステンパーウイルスはくしゃみや咳からも感染します。
繁殖力が極めて高く、場合によっては数日で死に至ることがあります。
 
ただし、これらのウイルスは混合ワクチンの接種によって発症・重症化を防ぐことが可能です!
年1回の混合ワクチン接種を忘れずに行いましょう。

 

猫は特に注意!IBD・リンパ腫との区別がつきにくい

特に猫の細菌性腸炎で知っておいていただきたいのが、症状が似た別の病気が潜んでいる可能性です。
 

病気 症状の類似点 重症度 ポイント
IBD
(炎症性腸疾患)
・慢性的な下痢や嘔吐
・体重減少
高い(生涯治療が必要なことも) ・細菌性腸炎との診断が難しい
・繰り返す下痢は要注意
小細胞性リンパ腫 IBD とほぼ同じ症状 非常に高い(腫瘍) ・IBD と誤診されやすい
・確定には組織検査が必要
猫パルボウイルス
(汎白血球減少症)
・急性の嘔吐や下痢
・発熱
高い(致死率が高い) ・子猫で特に危険
・ワクチン未接種の場合は要注意
甲状腺機能亢進症 ・嘔吐や下痢
・体重減少
中〜高(中高齢猫に多い) 多飲多尿を伴うことが多い

 
猫の「繰り返す嘔吐・下痢」を「また細菌性腸炎かな」と放置するのは危険です。
IBDや小細胞性リンパ腫は早期発見・早期治療が予後を大きく左右します。
 

⚠️

症状が2〜3週間以上続く場合は、精密検査(血液検査または超音波検査、場合によっては組織検査)を検討してください。

 

犬・猫が細菌性腸炎にかかる原因

細菌性腸炎の主な原因となる3つの細菌を紹介します。

 

サルモネラ菌

サルモネラ菌は人獣共通感染症(ズーノーシス)の原因菌であり、人・犬・猫の腸炎を引き起こします。
 
主な感染経路は生肉を食べることです。
「犬猫はもともと野生動物だから生肉でも大丈夫」という誤った知識で生肉を与えると、細菌性腸炎を引き起こすことがあります。

 

カンピロバクター

犬や猫の場合、もともと体内にカンピロバクターを保菌しているため、健康な状態でも便から検出されることがあります。
しかし、何らかの原因で腸内で毒素を生み出すと、細菌性腸炎を引き起こします。
特に、ストレスの多い環境下免疫力が低下しているタイミングに発症しやすい傾向があります。

 

クロストリジウム

犬や猫を含む哺乳類の消化管内に、もともと存在している細菌です。
カンピロバクターと同様に健康な犬猫の便から検出されることがあるため、「便の中にクロストリジウムがある=病気」ではありません。
ただし、何らかの原因で毒素を生み出すと細菌性腸炎を引き起こします。

 

犬・猫の細菌性腸炎は予防できる?

サルモネラ菌、カンピロバクター、クロストリジウムによる犬や猫の細菌性腸炎は、予防することが可能です!
基本的な予防方針は、以下の通りです。
 

ポイント
サルモネラ菌の侵入をブロック
常在菌の「悪玉菌化」を防ぐ

 
詳しく表にまとめると、次の通りです。
 

細菌 予防策
非常在菌 サルモネラ菌 生肉を与えない
生肉に触れた手で食器・おもちゃを触らない
常在菌 カンピロバクター ストレス・免疫低下を避ける
クロストリジウム 食事の内容を急激に変えない
(急に脂っこいフードに切り替える等)

 
非常在菌であるサルモネラ菌は、感染源(生肉)を遠ざけるのがいちばんの予防です。
一方、もともと腸内にいるカンピロバクターやクロストリジウムについては、環境を急変させてストレスを与えることなどが「悪玉菌化」の原因となるため、注意しましょう。

 

よくある質問

Q. 犬の細菌性腸炎はどのくらいで治りますか?

A. 軽症であれば抗生剤・整腸剤などの内服薬で1週間程度で改善するケースが多いです。
 
重症で点滴・入院が必要な場合も、一般的には1週間程度が目安です。
ただし、他の病気が隠れている場合は長引くことがあります。

 

Q. 細菌性腸炎は自然治癒しますか?

A. 軽症であれば自然に回復することもありますが、自己判断は禁物です。
 
下痢・嘔吐は細菌性腸炎以外の病気でも起こる症状であり、自宅での判断は困難です。

 

Q. 犬の胃腸炎は自然に治りますか?

A. 軽症なら自然回復することもありますが、血便・元気消失がある場合は出血性胃腸炎(HGE)など緊急性の高い病気の可能性があります。

 

Q. 猫の細菌性腸炎は完治しますか?

A. 細菌性腸炎自体は、完治させることが可能です。
 
ただし繰り返す場合は、IBD(炎症性腸疾患)や小細胞性リンパ腫など、別の病気が背景にある可能性があります。その場合は精密検査が必要です。

 

Q. 猫の腸炎はどのくらいで治りますか?

A. 軽症であれば1週間程度で改善が見込めます。
 
ただし猫は脱水に弱く症状を隠しがちなため、犬より早めの受診を推奨します。
症状が繰り返す場合は2〜3週間以上かかることがあり、その場合は精密検査を検討してください。

 

Q. ペットの細菌性腸炎の原因は何ですか?

A. 主な原因はサルモネラ菌・カンピロバクター・クロストリジウムの3種類です。
 
このうちカンピロバクターとクロストリジウムはもともと腸内に存在する細菌で、腸内バランスが崩れたときに発症します。サルモネラ菌は生肉の摂取が主な感染経路です。

 

まとめ

今回は、サルモネラ菌をはじめとする細菌による犬・猫の細菌性腸炎について解説してきました。

 


犬・猫の細菌性腸炎は適切に治療すれば1週間程度で治る

自然治癒することもあるが、自己判断は危険

猫の場合、IBD・小細胞性リンパ腫など深刻な病気の可能性あり

細菌性腸炎は原因菌(サルモネラ菌、カンピロバクター、クロストリジウム)に応じた予防策あり

 
特に重要なのは、受診のタイミングを間違えないことです。
2日以上が経過しても症状がおさまらなかったり、異様にぐったりしていたり、血便がみられたりした場合は、すみやかに医療機関を受診しましょう!