犬や猫の細菌性腸炎の原因とは?急な下痢や嘔吐には要注意!
今回のテーマは、「犬と猫の細菌性腸炎」です。
細菌性腸炎は細菌による感染症の一種で、どの犬種・猫種でも起こりえる病気です。
ここでは、そんな細菌性腸炎の具体的な症状や原因、予防法について解説します。
また、多くの飼い主さんが気になっている「病院に行くべきか?」「自然に治るのか?」といった疑問についてもお答えしていますので、ぜひ最後までご覧いたければと思います。
犬や猫が細菌性腸炎になったらどんな症状があらわれる?
犬や猫が細菌性腸炎になると発熱したり、軟便や下痢、粘膜便を何度も繰り返すようになったりして、場合によっては血便などの症状を引き起こします。
こうした症状を目の当たりにして慌ててしまう飼い主さんも大勢いらっしゃるかと思いますが、細菌性腸炎は軽症で済むことがほとんどです。
ただし、もともと健康状態が良くない子がなってしまった場合は重症化することがあるため、要注意です。
細菌性腸炎が重症化すると、食欲不振が見られたり、せっかく食べても吐いてしまったり、脱水症状を引き起こしたりすることがあります。
軽症なら放置しても良い?
細菌性腸炎は、たとえ発症しても軽症であることが多いですが、だからといって放っておくのは危険です。
というのも、そもそも軽傷で済む細菌性腸炎ではない場合があるからです。
下痢、発熱といった症状は、ほかの病気になった場合にもよくみられる症状で、多くの犬・猫を見てきた獣医師たちでさえも「見ただけで判断するのは難しい」とされています。
「病院が好きじゃない」
「距離が離れている」
そんな理由で様子見をしたい飼い主さんもいらっしゃると思いますが、他の病気が隠れている可能性を考え、症状が見られた場合は早めに病院を受診するようにしましょう。
細菌性腸炎と似たような症状があらわれるケース
軽症で済む細菌性腸炎かと思っていたら、重症化リスクがある他の病気だった……というケースは、決して少なくありません。
そこで、ここでは細菌性腸炎と似た症状があらわれる病気についてまとめてみました。
寄生虫による感染
犬回虫・猫回虫やコクシジウム・ジアルジアといった寄生虫に感染することで、下痢や嘔吐などの症状があらわれることがあります。
これらの寄生虫は、放置していても自然に死滅することはありません。
時間が経つにつれ、体内の寄生虫は繫殖していき、発育不良や食欲低下といった症状があらわれ、重篤な症状を引き起こす可能性もあるため、確実に駆虫する必要があります。
なお、寄生虫の場合はあらかじめ予防することが可能であるため、フィラリアやノミ・ダニと共に回虫などの寄生虫の対策も同時に行うことで対策しましょう。
ウイルスの感染
パルボウイルス(CPV)やジステンパーウイルス(CDV)といったウイルスによって下痢、発熱、嘔吐といった症状を起こすことがあります。
パルボウイルスは、すでに感染している他の犬・猫の嘔吐物や便などから、そしてジステンパーウイルスにいたってはすでに感染している犬・猫のくしゃみや咳からも感染するといわれています。
また繫殖力が極めて高く、場合によっては数日で死に至る場合があります。
しかし、これらのウイルスは混合ワクチンの接種によって発症や重症化を防ぐことができます。そのため、犬や猫を飼っている場合は年1回、必ず混合ワクチンを接種させましょう。
犬や猫が細菌性腸炎にかかる原因
「細菌性腸炎」という名称からも原因が「細菌」であるということは確実ですが、具体的にはどのような細菌が原因になるのでしょうか。
ここでは、犬や猫の細菌性腸炎の主な原因といわれている3つの細菌についてまとめてみました。
サルモネラ菌
腹痛、下痢などの症状を引き起こすとして有名なサルモネラ菌。一般的に私たちが「食中毒」というとき、サルモネラ菌が原因になっているケースが多いです。お子さんがいるご家庭なら、夏場を中心に注意を呼びかけられる機会も多いでしょう。
そんなサルモネラ菌、実は人獣共通感染症(ズーノーシス)であり、人間だけでなく犬や猫の腸炎を引き起こす原因にもなります。
このサルモネラ菌の主な感染経路は「生肉を食べること」です。
「犬や猫はもともと野生動物なんだし、生肉をやっても大丈夫だろう」などと誤った知識でごはんの代わりにあげたりすると、細菌性腸炎を引き起こすことがあるので絶対にやめましょう。
カンピロバクター
カンピロバクターも、主に生肉で感染する可能性がある細菌です。
鶏肉、豚肉を生で食べると発症しやすいという特徴があり、とくに私たち人間は要注意です。
一方、犬や猫の場合、もともと体内にカンピロバクターを保菌しているため、健康な状態であっても便からカンピロバクターが検出されることがあります。
そのため、犬や猫はカンピロバクターに感染しても大丈夫と考える人は少なくありません。ですが、それは間違いです。
確かに体内にもともと保菌してはいますが、何らかの原因でカンピロバクターが腸内で毒素を生み出し、細菌性腸炎を引き起こす可能性があるのです。
クロストリジウム
クロストリジウムは、犬や猫を含む哺乳類の消化管内にもともと存在している細菌のひとつです。
人間でも、新生児の腸内に見られます。
上述のカンピロバクターと同じく、健康な犬や猫の便からもクロストリジウムが検出されるため「ウンチの中にクロストリジウムがある=病気になっている」というわけではありません。
ただし、クロストリジウムもカンピロバクターと同じく何らかの原因で毒素を生み出すことがあり、その結果、細菌性腸炎を引き起こす場合があります。
犬や猫の細菌性腸炎は予防することができる?
細菌性腸炎を引き起こす主な細菌はサルモネラ菌、カンピロバクター、クロストリジウムという3種類ですが、このうち予防できるのはサルモネラ菌のみです。
- サルモネラ菌がいる可能性が高い「生肉」を食べさせない
- 生肉を触った手で犬や猫の食器やおもちゃに触らない
このような対策をすることで予防が可能です。
一方のカンピロバクターやクロストリジウムはもともと腸内に生息している菌であるため、予防ができません。
いくら生肉と接触しないように気をつけていても、発症するケースがあります。
犬や猫の細菌性腸炎の治療方法
症状が軽度の場合は、抗生剤・整腸剤・下痢止めといった内服薬を処方してもらうのが一般的です。
用法用量を守って飲ませれば、完治させることができるでしょう。
ただし、重症化した場合は静脈点滴などの処置が施されます。
個々の状況によって処置の具体的な期間は異なりますが、点滴の場合は1週間程度の入院が必要になるとお考えください。
ちなみに、内服薬を飲んでも症状が改善しない場合、細菌性腸炎とは別の病気を発症している可能性があります。
その場合は、再度検査を行って症状の原因を特定した上で、原因に対して適切な対処をしていく必要があります。
まとめ
今回は犬と猫の「細菌性腸炎」についてまとめてみました。
ポイントは以下の通りです。
- 細菌性腸炎の症状は下痢や嘔吐、発熱
- ほかの病気である可能性もあるため早めに受診した方が良い
- 細菌性腸炎は寄生虫やウイルスによる腸炎と症状が似ている
- 細菌性腸炎の原因はサルモネラ菌、カンピロバクター、クロストリジウム
- サルモネラ菌の予防法は「生肉を与えない」
特にわんちゃんの場合、生肉を欲しがる子は多いです。
しかし、愛犬の健康を考えるのであれば、生肉を与えるのは望ましくありません。
「1回くらいならあげてもいいよね」などと思わず、肉をごはんとしてあげるときはしっかり火を通した状態であげることを心がけましょう。
細菌性腸炎は下痢や嘔吐などよくある症状がみられる疾患。しかしだからこそ他の病気と見比べるためにも早めに動物病院を受診しましょう!ペット用の抗生物質・抗菌剤は通販でも購入することができるので治療に役立ててくださいね!